高校ビブリオバトル2016
「毒殺」をテーマに8人の作家が競作。毒の魅力に気づくかも
『毒殺協奏曲』アミの会(仮)
佐藤美奈さん(千葉県・県立松戸高校3年)

この毒々しい赤い本には、8人の作家さんによる8つのお話が載っていて、その中の小説はすべて「毒殺」というテーマに絞って書かれています。題材やトリックが重複しているものは一つもありません。そのため、一つ一つのお話を推理する楽しさ、それから、どうして毒殺をしなければいけない状況に至ってしまったのかを考える、主人公や登場人物の心情に浸ってみるという楽しさ、そして、毒の成分や効果について学べる楽しさの3つがあります。私はこの3つのことをまとめて「毒殺三大読法」と呼んでいます。
「毒物」、「毒殺」というと、すごくとっつきにくいものだと思うかもしれませんが、そんなことはありません。皆さんの身の回りにももちろん「毒」はあふれています。例えば、地球上にあるすべての海水を集めたとき、2000億人を殺せることを知っていますか。かの有名な哲学者であるソクラテスの処刑に使われた毒の名前を知っていますか。毒物は近づきがたいものでありながら、身近にも潜んでいるのです。
私がこの本の中で一番好きなのは、小林泰三さんの「吹雪の朝」というお話です。吹雪の吹き荒れるぽつんと孤立してしまった家に、偶然か、それとも必然か、集まってしまった7人の人たち。外界から、吹雪によって切り離されたその家で起こったのは本当に殺人事件だったのか。

生と死の狭間に立ち、複雑怪奇な「毒殺」というものの魅力に触れることによって、その魅力こそが甘美な「毒」であることに気づいてしまうかもしれません。皆さんも、帯にあるように、「毒を盛って読を制して」みてはいかがでしょう。普段は純文学、あるいは恋愛小説しか読まない人も、「毒殺」という新しいジャンルに足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>