高校ビブリオバトル2016
ジャガイモは差別され、長年、食べ物として認められなかった!?
『ジャガイモのきた道 文明・飢饉・戦争』山本紀夫
A.S さん(千葉県立柏中央高校2年)

ジャガイモがヨーロッパで食べられるようになったのは、なんとなく昔から食べられているイメージがありますが、実はイギリスで産業革命が起こった頃、近世の初め頃です。日本でも江戸時代に入ってからやっと登場する、わりと最近の食べ物です。
ジャガイモなんてどことなく昔っぽいイメージがあるし、もっと前から食べられていてもおかしくない感じもします。これから、今までジャガイモがたどってきた、何とも奇想天外な、壮大なドラマをこの本の中から紹介します。
南アメリカが原産地であるジャガイモは、大航海時代にスペインがヨーロッパに持ち帰ってきたもの。ヨーロッパでは最初、ジャガイモは食べ物としてではなく花を観賞するものとして栽培されていました。今では花を見て楽しむ機会の方が少なくなりましたが、ジャガイモの花は色とりどりの花弁をしていてとてもきれいなんですよ。
ジャガイモは他にも家畜の餌などに使われましたが、ごつごつして不格好なためひどい偏見にさらされ、食べたら病気になる、聖書に載っていない悪魔の植物だ、とまで言われ、ヨーロッパの人々に食べられることはあまりありませんでした。
人々の偏見がなくなり、多くの人にジャガイモが受け入れられた例のわかりやすいものが、ジャガイモ大国ドイツの貧民施設で出された給食の内容です。
18世紀後半に出された食事の主な内容はバター付きの黒パンやおかゆなど。ジャガイモは1週間に1度出てくる程度です。しかし、19世紀半ばになるとジャガイモはほぼ毎日登場し、1日1kgも食べられているのです。これはもはやジャガイモによる食事の革命と言っても過言ではありません。
1kgというと、中くらいのジャガイモだと10個ほど、小さいサイズだと20個ほどです。それまでほとんど食べられていなかったジャガイモが毎日10個、20個食べられるようになったのは、一体何があったのでしょうか。
私はこれまで、ジャガイモといえばフライドポテトにポテトチップス、肉じゃが、コロッケ、じゃがバターと、昔から世界中で多くの人に親しまれてきた食べ物というイメージを持っていました。しかし本当は多くの偏見とレッテルを貼られ人々に嫌われながらも人類のピンチを助けてくれたすごい植物なんだと、この本を読んでわかりました。
この本は新書ですが、最初のページに写真もいくつかあり、ジャガイモのお花畑も載っているのでとてもお薦めです。今回はヨーロッパについて紹介しましたが、原産地である南アメリカの話もたくさん載っていてとても面白いです。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>
こちらも 鈴木さんおすすめ

『ファンム・アレース』
香月日輪 (講談社)
児童書で内容もファンタジーの要素が多いのですが、軽い気持ちで読むと、とても大きなテーマがたくさん詰め込まれていて、考えさせることの多い、本当に感動する物語です。
[出版社のサイトへ]


『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』
小林朋道(築地書館)
鳥取環境大学を舞台に繰り広げられる、ゆかいな動物と人間の行動を、本当に楽しく学べる1冊です。勉強になることもたくさんあるのでおススメです。
[出版社のサイトへ]
鈴木さんmini interview

好きな作家は、香月日輪。

小学生の時好きだった本は、『獣の奏者』(上橋菜穂子著)、『マチルダは小さな大天才』(ロアルド・ダール著)。

歴史関係、特に世界史の本。また、以前から気になっていた『感じる科学』はビブリオバトルでの発表を見て、絶対読もうと思いました。