高校ビブリオバトル2016
おいしそうな料理がいっぱい!レシピ本にもなるスポーツ小説
『タスキメシ』額賀澪
大塚麻由さん(群馬県・ぐんま国際アカデミー高等部1年)

「タスキメシ」の「タスキ」は駅伝の「たすき」のこと、「メシ」は「食」ということです。この物語の最大の魅力は、登場人物の心情が料理によって表されているところです。登場人物を通して、例えば料理からの湯気の立ち方や、食べた時の食感などが伝わることによって、登場人物の心情などもわかるようになっています。
この本の主人公は、兄の眞家早馬と弟の眞家春馬の2人です。2人は高校の陸上部ですが、兄は怪我によって陸上部を引退しなくてはいけなくなります。弟はそのまま陸上部を続けたので、期待が一心に集まってしまいます。弟はそのことを重荷に感じてしまい、2人の間に確執ができます。そこで兄がとった行動は料理研究部に入って料理を学ぶこと。だからこの話にはとてもたくさん料理がでてくるのです。
私はすごく食べることが好きです。だから、この物語にたくさん出てくる料理に重きを置いて読んでみました。中でも私が一番気になったのは「アスパラのホイル焼き」という料理です。兄弟の学校で栽培されているアスパラが大量に収穫されたため、料理研究部がアスパラづくしの料理を作ろうと提案。そのひとつが「アスパラのホイル焼き」なんです。
とてもシンプルな料理で、ただアスパラに塩をかけて焼いただけなのですが、こんなふうに湯気の立ち方が文字で表せるのかというくらい印象的で、すごくおいしそうに感じました。私は普段料理は全然しませんが、これだったら簡単だからチャレンジできそうだと思いました。
この本は小説ですが、レシピ本としても使ってほしいです。この話に登場する料理は必ず何か理由があって登場しています。だから、一つひとつの料理に愛着や思い出などが読む人の中にも生まれてくるんです。そうなると、この料理を作ってみようとか、もっとこの料理について知りたいなどと思って、料理をする機会も増えるようになると思います。

夕食の献立に困ったり、もう一品何かほしいなと思ったりした時に、この本が有効活用できます。私も実際この本を読んで、たくさんの料理がしてみたいなと思いました。料理が苦手な方も、この本で料理が好きになるかもしれません。また、私のように駅伝とか陸上とかに興味がない人でも食べ物の視点から読めるし、また陸上や駅伝に興味がある人たちはその視点からも読める本です。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>
こちらも 大塚さんおすすめ



大塚さんmini interview

本を好きになったきっかけは『何が困るかって』(坂木司著)という短編集です。『和菓子のアン』を読んで坂木司さんの本が好きになり、次にこの本を読みました。どんでん返しがあったり、少し考えさせられたり、この一冊にずいぶん振り回された気がします。本に感情をコントロールされたのは初めてで、改めて本って人の心を動かすんだなあと感じ、本を読むのが好きになりました。

『人間失格』(太宰治著)
私は今までなにか特殊能力を持っていたり、なにかに長けていたりする主人公しか知りませんでした。また、主人公とはそういうものだと勝手に決めつけていました。しかし、この本は私の価値観をガラリと変えました。この小説はどこか不気味だと思ったのはきっとこの本が「人間らしい」からだと思います。人間が誰しも持っている醜さや愚かさを描写していると感じました。