高校ビブリオバトル2016
ぼくは彼女のためになにができるのか。復讐、それとも…
『ぼくのメジャースプーン』辻村深月
赤穂日菜さん(長野県須坂高校2年)

タイトルから、最初は料理の本なのかなと考えてしまいました。しかし、帯の文には、「三か月前の事件に終止符を。大切なあの子を救うため戦う『ぼく』の七日間」。
この本の主人公である「ぼく」は小学4年生のまじめで優しい男の子です。「ぼく」には大切な幼なじみがいます。名前はふみちゃん。頭が良くて、スポーツができて、動物が大好きな女の子です。
ふみちゃんは小学校でうさぎの飼育係をしていましたが、ある日ふみちゃんが大切にしていたうさぎが何者かによってバラバラに切り刻まれ、殺されてしまうという残酷な事件が起きます。この事件の第一発見者となったふみちゃんは大きなショックを受け、心を閉ざし、学校にもまったく行くことができなくなってしまいます。
ふみちゃんをこんな目に遭わせた犯人に対し、「ぼく」は復讐を決意。「ぼく」は犯人と会うまでの七日間、必死に「ぼく」にできることは何なのか考え続けます。大切な人が傷つけられてしまった時、大切なその人のためにあなたは何ができますか。これがこの小説の核心部分です。
「ぼく」はこの七日間で自分自身と戦い続けました。ふみちゃんは復讐なんか望んでいない。誰かが不幸になることを望むような子じゃない。それでもふみちゃんをこんな目に遭わせた犯人をこのままにはしておけない。
復讐したいと願う「ぼく」の心。でも、復讐なんかしたってふみちゃんは元には戻らない。ふみちゃんのためにできることって何だろう。「ぼく」は心の中の自分と闘い続けます。そして、ある一つの答えにたどり着きます。その答えとは…。
犯人への復讐を考える「ぼく」の迷いや悲しみ、怒り。私自身も、「ぼく」の様々な感情に引きずり込まれました。そして、小説の初めから終わりまで一貫した、ふみちゃんに対する「ぼく」の真っ直ぐな想いに胸が痛みました。読者もきっと「ぼく」の強い想いに心動かされ、「ぼく」と同じ立場になってふみちゃんのためにできることを探し始めることでしょう。
すべて読み終えた時、この題名の持つ本当の意味に気付かされました。ぼくの出した答えは正しいものなのか、それとも間違ったものなのでしょうか。
最後に心に残る一節を紹介します。
「それでもぼくには何かができる。できるのにそれをやらなかったらぼくは絶対に後悔する」。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>
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海外文学に挑戦したいです。