高校ビブリオバトル2016
2人で究極のRPGをつくる冒険へ
『都会のトム&ソーヤ』はやみねかおる
永島寛子さん(東京都・大東文化第一高校1年)

これは、2人の少年が「究極のゲーム」をつくりあげるために、いろいろな冒険をして成長していく物語です。2人がつくりたい「究極のゲーム」というのは、ゲームのジャンルでいうとロールプレイングゲーム、通称RPG。それを、現実世界でやってしまおう、というものです。その一つの目的のため、自分たちのライバルを探しに下水道をピクニックしたり、ゲームづくりを邪魔する人を探しに深夜のデパートに侵入したりします。
竜王創也くんと内藤内人くんというこの2人はとても対照的な人物です。竜王くんは巨大グループの御曹司で、常にボディーガードが1人つき、移動はいつも高級車という、生粋のお金持ち。一方内藤くんは、いわゆるサラリーマン家庭のようなごく普通の環境に育った少年です。性格のタイプも違っていて、教室では、竜王くんは窓側で静かに本を読んでいますが、内藤くんはクラスの中心でクラスメイトとおしゃべりしているような少年です。一番違うのは、竜王くんは将来の夢を具体的に持っているところです。それが、「究極のゲームをつくりたい」ということ。一方内藤くんは、将来について夢を持っておらず、今の自分に対しても不安を抱えています。
私がこの本を読み始めたときも、内藤くんと同じように、将来のことは具体的に決まっておらず、「私はこれからどういう進路に進めばいいのだろう」と悩みを抱いていた時期でした。この物語では、内藤くんは竜王くんに巻き込まれ、2人で究極のゲームをつくりあげようとしていきます。そのうち内藤くんは、自分もちゃんと関わりたい、竜王くんの手伝いだけでなく、自分も制作する側としてストーリーを書くといったことをしてみたい、と具体的な将来の目標を持つようになるのです。これは、対照的な2人が出会わなければ生まれていなかったものでした。
私は、人との出会いや価値観の違う人との関わりをもっと大切にしていかなければならないと感じました。今、高校にはいろいろな地方から人がたくさん集まってきています。この先、大学や社会に出たらもっとそのような機会が増えるでしょう。このような出会いを、常日頃から大事にしていかなければいけないと思いました。また、この本の2人のように、とても困難なことにもチャレンジしていこうと思えました。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>