高校ビブリオバトル2016
一瞬だけ変身できる車いすのエース。京都と英語も楽しめる
『パーフェクト・ワールド』清涼院流水
仲村実祐さん(新潟県立新潟江南高校1年)

タイトルは『パーフェクト・ワールド』ですが、この物語の主人公は完璧ではありません。彼は交通事故に遭ってしまい、車いすの生活をしています。主人公の名前は一角英数(いっかくひでかず)です。
英数は、実はある瞬間だけ完璧「以上」になることができます。それは、例えば困っている人を見かけた時、その困った人を助けたいと思った瞬間に自分で「変身」とつぶやくと、車いすから立ち上がって、普通の人以上のパワーを出して、困っている人を1分間だけ助けることができるという能力を持っているのです。よぼよぼのおばあさんがもうすぐ赤信号に変わる横断歩道を渡っているときに、英数は車いすから突然降り、「変身」と言って、1分間でそのおばあさんを歩道まで送り届けて、また自分の車いすに戻ってきます。人助けはそれだけ一瞬の出来事です。
そんな彼は、漢字で名前を書くと「英数(えいすう)」なので、みんなからはエースというふうに呼ばれています。ある日エースのもとに外国から留学生がやってきます。留学生の名前はレイ。彼も特別な能力を持っているのですが、それはぜひ読んで確認してください。
私がひかれたポイントは2つ。まず1つ目は、この本を読むと、英語が学べるところです。エースは英語ができるのですが、どうして英語ができるようになったのかがこの本には書かれているのです。それは、自分をこういうふうに呼んでほしい、とレイに自己紹介するシーンです。「と言っても、アメリカ人には『ヒデカズ』という音は発音しにくい。彼にどう呼んでもらうか、ぼくは決めていた。“Please call me Ace. It spelled A-c-e.”」。これはただ単に英語を読んでいるだけではありません。この本に登場する「キャナスピーク」というものに沿って英語を読んでいるのです。これは、英数の父が発明した、どんな言語でもネイティブスピーカーのように発音することができるようになる魔法の言葉です。本書中ではこのキャナスピークがかなり鍵になります。実際にルビがふられており、ルールもこの本の中に載っています。この本は全12巻のうちの1巻目なのですが、読み進めていくとキャナスピークをする方法も載っているので、特に言語を学ぶ方におすすめです。
2つ目のポイントは、この物語は京都を舞台に描かれているのですが、本に京都の実際の写真や手書きの地図がたくさん載っているところです。中3の時の修学旅行でこの本を実際に手に持って歩いてみたところ、本当にその建物があったのでびっくりした記憶があります。これは、作者が自分の経験をもとに、撮ったり、書いたりしたものだそうです。
そんな魅力がたくさん詰まっているのが『パーフェクト・ワールド』です。
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※出版元に在庫なし
<全国高等学校ビブリオバトル2016関東甲信越大会の発表より>
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