高校ビブリオバトル2016

感情のリミッターが吹っ切れる怖さ!古い洋館で人が消える

『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』小野不由美

塩澤菜月さん(山梨県立巨摩高校2年)

『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』(KADOKAWA メディアファクトリー)
『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』(KADOKAWA メディアファクトリー)

すごく恐ろしいホラーシリーズ『ゴーストハント』の中でも、最も怖いのが、5巻『鮮血の迷宮』です。このシリーズは、主人公の麻衣という女の子が個性的な仲間たちとともにゴーストハント、つまり幽霊退治をしていくお話です。

 

主人公たちは人が次々に消えていく、山中の古い洋館に調査に入ります。そこで、他の霊能者たちに降霊会に出ないかと誘われます。

 

降霊会というのは、霊能者に霊を憑りつかせて霊とコミュニケーションをとるもので、霊を憑りつかせた霊能者の口を通じて話したり、紙とペンを用意して書いたり、様々なものがあります。この本の中では、紙とペンを使う降霊会を行います。

 

降霊会で、みんなで机を囲んで座っていたとき、机の上に置いた1本のろうそくの火がフッと消えました。部屋はそのろうそくの火だけなので、もちろん真っ暗に。そして次の瞬間、ドンドンドンドンドンってすごい大きな音が。その音が止んだと思ったら、複数の紙に黒いペンで「助けて」と書いてあり、1枚だけ赤い字で「死にたくない」とありました。その「死にたくない」というメッセージについてはネタバレになってしまうのでここでは詳しく言いませんが、後に、こういう霊が書いたんだ、だからまるで血のような赤い字で「死にたくない」って書かれていたんだということがわかります。

 

この部分を読んで私が思ったのは、人間の感情にはリミッターがあるいうこと。毎日そのリミッターを突き破ってすごく激しく喜怒哀楽していたら疲れてしまいますよね。けれども、この本の怖いところは、そのリミッターをとても簡単にすっと切り裂いてしまうんです。リミッターを切り裂かれると、普段自分が感じていた怖さが実はこんなにも深いものだったということがわかります。

 

塩澤菜月さん
塩澤菜月さん

その怖さって、自分の身に余るものだと思うんです。身に余るものだけれど、それがとても快感なんです。そして、怖いけれど、「この本すごく怖かったけれど、すごく楽しかったからぜひ読んでね」と笑顔で紹介ができるくらい楽しい本です。

 

このシリーズは表紙も凝っています。1巻と6巻は光にあてて暗いところで見ると光ります。4巻は、人型にくり抜かれた黒い部分があり、そこに熱をあてると下から違うイラストが出てくる仕掛け。そのイラストが本の中で意味を持つので、注目してください。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>

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