高校ビブリオバトル2016

ヒトラーが現代ドイツで、ヒトラーのモノマネ芸人で大人気!?

『帰ってきたヒトラー』ティムール・ヴェルメシュ 森内薫:訳

竹西怜くん(東京都・広尾学園高校2年)

『帰ってきたヒトラー』(河出文庫)
『帰ってきたヒトラー』(河出文庫)

本書は、ヒトラーが敗戦寸前に、とある原因で現代ドイツへとタイムスリップするお話です。

 

この秋アメリカで大統領選が行われました。ここで注目を集めているのは共和党候補のトランプ氏でしたね。アメリカは第二次世界大戦後、世界への影響力を保持し、世界の治安を守る存在でしたが、トランプ氏はそれを不公平と言い、「今こそ自分たちの利益をどんどん上げていこう。そしてアメリカを豊かな国にしよう」と掲げて、見事、当選しました。

 

これは非常に内向きの考え方で、現在世界に広まりつつあります。この考えというのは第二次大戦前のドイツと似ているのではないかと思います。そこで、今回、この本を紹介しようと思い至ったのです。

 

現代ドイツに現れたヒトラーは、街を見て驚愕します。彼の知っているのは戦争中のドイツですから、いきなりこんなに発展した街を見たら驚くはずです。そこで、まず自分がどこにいるのか把握しようとします。そのために彼は新聞屋に行き、2011年のドイツ、ベルリンにいるを知り、驚きその場で倒れ込んでしまいます。

 

その後、新聞屋の店員さんに 「こいつ面白いな。お笑い芸人じゃないか」と、あろうことか、勘違いされたヒトラーは、常連のテレビ局の人に紹介されてしまうのです。

 

そして、テレビ局の人は「こいつ面白いじゃないか。メディアに出そう!」と思いヒトラーをメディアに出すことになります。ヒトラーのモノマネ芸人及びコメディアンとして。

 

彼の主張は昔と変わりません。「再び偉大なドイツを取り戻す。移民なんて排斥」。こんな感じの主張を続けるわけですが、これが案外現代のドイツの人たちにウケます。ヒトラーはどんどんコメディ番組に出て、地位を拡大していきます。そして小説の最後に、彼はこう言います。

「悪いことばかりではなかった。再び歩き出そう。このスローガンと共に」。

 

竹西怜くん
竹西怜くん

私たちの中には、外国からの影響は受けにくい、海外の考え方には簡単に馴染まないと思っている人もいるかもしれません。しかし、本書の最初の方にこのような文言が書かれています。

「私たちは最初、彼のことを笑っていた。だが、気づけば私たちは彼と共に笑っていた」。

 

この本を読んで今後の国際情勢を考えるきっかけにしてもらいたいと思います。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>

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