高校ビブリオバトル2016
空也上人をラッパーと呼ぶ!仏像ラブな2人の仏像鑑賞旅行記
『見仏記』いとうせいこう/みうらじゅん
黒川紗香さん(千葉県立小金高校2年)

仏友である、いとうせいこうさんと、みうらじゅんさんの2人が、全国の仏像を見て旅する旅行記『見仏記』を紹介します。この2人、一癖も二癖もあって、普通の旅行記では終わりません。
空也上人は念仏を唱えながら庶民に仏教を伝えた偉人で、日本史の教科書にも掲載されている、口から仏様が飛び出している空也上人立像でも知られています。そんな空也上人もこの2人にかかれば、「念仏を唱えながらストリートに生きた空也上人は尊敬すべきラッパーである」。偉人をラッパーと呼ぶなんて!そう、この本の面白いところはこの独特な表現にあるのです。
みうらじゅんさんは小学生の頃から仏像や仏教にすごく興味があり、中学入試の面接では、仏像に関する熱いトークで校長先生に気に入られて見事中学校に合格したそうです。また、現在、会員数2500人の興福寺・阿修羅ファンクラブの会長でもあります。
私にとって、仏像や仏教はまじめな信仰の対象であるというイメージが強く、もっとしっかり向き合わなければいけないものだと思っていました。でもこの本は私の考えや先入観をあっさりと飛び越えてくれました。一言で言うなら仏像ラブ、または仏教ラブ。「考えるんじゃない、感じるんだ」。そう言われている気がしました。すると仏教の教えがコーンスープを飲むようにスーっと体に入ってきたんです。
他にも「体のラインがセクシー」だとか、「ジャニーズ系」などとふざけた例えも多く、寝転がりながら仏像を見るなど失礼極まりないのですが、そこには熱い熱い仏像ラブがあるのです。そしてその仏像ラブが、私たちに新しい仏像の見方や宗教の魅力を伝えてくれます。

2人は興福寺や法隆寺といった有名なお寺だけでなく、全国のいろいろなところに旅し、どこのお寺の仏像に対しても温かで独特な目線を向けています。
この本は、形は何であれ本質を捉える愛と情熱が大事だと思わせてくれます。そして、仏像や仏教ってこんな見方をしたっていいんだと思えるでしょう。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>
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