高校ビブリオバトル2016

いつか故郷を離れる島の高校生たちの家族・友情

『島はぼくらと』辻村深月

佐宗隆弘くん(埼玉県立春日部高校2年)

『島はぼくらと』(講談社)
『島はぼくらと』(講談社)

島で暮らす4人の高校生が島の中で起きる様々な問題を解決しながら友情を深めていきます。4人のチームワークも素晴らしいものです。

 

ある時、怪しい作家が、島にある幻の脚本を探すのだと、島の中を嗅ぎまわっていました。その人にさっさと帰ってもらいたい4人組は、ある作戦を考えます。演劇部員である新が、偽物の脚本を書き、そこにお茶をこぼして紙をしわくちゃにして、いかにも昔からある感じにしたものをその作家に渡します。すると、予想通りその作家は帰ってくれました。ところが、その脚本は、題名だけ変えられてテレビ局のコンクールに出品され、見事優勝し賞金30万円を獲得。当然、新には1円も入ってきませんでしたが。

 

島の高校生たちはいつかは島を出ていきます。島のお母さんたちは、子供がいつかは旅立つと思って育てているので、母子手帳には、「島を出ても元気でいてほしい」といった子供に向けたメッセージをいろいろ書いています。その母子手帳を島を旅立つ子供に渡すというのが、この島の一種の儀式なのです。私も母親に母子手帳を見せてもらいました。私の手帳には、「いつになったら首が座るのかなあ」や「ちゃんと歩いてくれるかなあ」というような不安が書かれていました。

 

この本の中にはコミュニティデザイナーという仕事が出てきます。寂れてしまった商店街などの魅力を再発掘し、地域経済を活性化させるために、地域や空間をデザインする仕事です。こういう仕事もあるんだと知りました。

 

本の中で最も印象に残っているところを紹介します。新のおじいちゃんは、島には病院がないので、本土の病院に入院していました。夜中に体調が急変しそのまま亡くなってしまいます。島から急いで船を出して向かっても、亡くなる時には立ち会うことができなかったのです。

 

佐宗隆弘くん
佐宗隆弘くん

そのあと、新のお父さんが家訓について話します。

「どれだけ出掛けに激しい喧嘩をしても衝突しても、必ず『いってきます』と『いってらっしゃい』を気持ちよく言うこと。これは矢野家の家訓だ。父の教えだ。別れる時は絶対に笑顔でいろ。後悔することがあるかもしれないから」。

できれば私も実践したいと思いました。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関東甲信越大会の発表より>

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