高校ビブリオバトル2016

犯人は読者!ミステリー初登場トリックは2億円

『最後のトリック』深水黎一郎

山本京佑くん(三重県立伊勢高校2年)

『最後のトリック』(河出文庫)
『最後のトリック』(河出文庫)

この本の帯には「読者全員が犯人」と書かれています。つまり僕も犯人です。僕は普段あまりミステリーを読まないのですが、この本は帯に惹かれて買ってしまいました。

 

物語は主人公である小説家に送られてきた手紙から始まります。その手紙にはこのように書かれています。「私は読者全員が犯人になるトリックを思いついた。このアイデアを2億円で買わないか」。

 

2億円は、慎ましく生活すれば一生生きていける金額です。想像もつかない金額です。僕だったらそんな怪しい手紙はスルーしますね。

 

手紙の送り主である香坂誠一は、このトリックやミステリーに並々ならぬ熱い思いを抱いています。香坂は手紙でこのように述べています。「ミステリーは今までに様々なものが生まれてきました。名探偵が名推理で事件を解決するシャーロック・ホームズのようなものだったり、あらかじめ犯人がわかっていて犯人の完璧なアリバイをどう崩すかを楽しむ倒叙型と言われるものだったり、その犯人が被害者や死体や動物といった意外なものだったり。しかし、その意外な犯人の中に今日まで出てきていないものがあります。それが『読者全員が犯人』です」。

 

僕は香坂の手紙を見て「ミステリーオタクだな」と確信しました。ミステリーの歴史を何から何まで全て説明するこの情熱。僕はあまりミステリーを読まないのですが、香坂に促されて他のミステリー小説も読みたくなりました。また、香坂以外にもユニークな登場人物がいるので、ぜひ注目していただきたいです。

 

さらに、この本はミステリーが得意ではない僕のような人でも読みやすいです。例えば最初の手紙ではわからなかった香坂誠一の人間性が読み進めていくうちに見えてくる。そういう面では、ミステリーとは違った楽しみ方もできる本だと思いました。そしてミステリーが得意な人も「読者全員が犯人」という謎を考えながら読むことで、とても楽しめる本だと思います。だからこの本はミステリーが得意な方、そうではない方、両方にお勧めしたいです。

 

山本京佑くん
山本京佑くん

「読者全員が犯人」といっても、皆さんがこの本を読んでいないと僕だけが犯人という状況です。しかし高校生である僕一人が犯人だなんて、不適切と思いませんか。ですから皆さんにもこの本を読んでもらって、秘密を共有する共犯者になってほしいのです。ぜひ犯人になって、この謎を僕と話し合いましょう。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 東海大会の発表より>

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