高校ビブリオバトル2016

兄から長距離ランナーの弟へ、思いを伝える料理のタスキ

『タスキメシ』額賀澪

増田莉子さん(三重県立津高校2年)

『タスキメシ』(小学館)
『タスキメシ』(小学館)

図書館でこの『タスキメシ』という本を目にした時、始めは「シ」のところが見えなくて「タスキメン」だと思ったんです。タスキの男、陸上する人のことなのかと。例えば「弱小チームをエースが引っ張って全国大会に行く」とか、「駄目になっていたエースが復活する」といった、オーソドックスな青春ストーリーを想像しました。

 

けれどもパッと本を広げるとこう書いてあります。「あきらめる勇気があったんだ。続ける恐怖なんて、きっと乗り越えられる」。私はこの言葉に感銘を受けました。王道の小説で「あきらめるな」「あきらめないで」というような言葉ばかり目にしていたので、「あきらめる勇気があったんだ」と言われてとても驚きました。

 

表紙に描かれている2人が主人公なのですが、この2人は『タスキメシ』というタイトルから想像できるように長距離ランナーです。駅伝をしている長距離ランナーの兄弟2人のうち、お兄ちゃんがけがをしてしまいます。そしてリハビリをして戻るのかと思いきや、お兄ちゃんは辞めてしまうんです。なぜ辞めたんだろう。私は妹なのでその気持ちが全くわかりませんでした。

 

わからないながらも読み進めていくと、お兄ちゃんは都という女の子に出会います。この女の子は料理がとても上手です。それでお兄ちゃんは料理研究部の部員として料理を習いに行きます。

 

弟は天才ランナーでどんどん速くなっていきます。一方で、不器用なお兄ちゃんはなかなか速くならない。努力して、努力して、やっと弟より速いくらいの実力です。それでお兄ちゃんがどうしたかというと、弟が偏食家なので料理で支えようとするんです。

 

増田莉子さん
増田莉子さん

料理で弟を支える。タスキという言葉はここにかかっていると思いました。陸上で弟より前に行くというタスキは、お兄ちゃんはあきらめました。けれど、陸上をサポートするタスキは絶対に守ろうとして料理を始めたわけです。私は妹なのでそういう気持ちはわかりません。けれど、タスキを渡せば、タスキから思いが伝わっていきますよね。思いのつまったタスキを、誰かに渡してみませんか。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 東海大会の発表より>