高校ビブリオバトル2016

フリーター、神様の使いぱしりとなってこき使われる

『神様の御用人』浅葉なつ

原 渚さん(大阪府立泉鳥取高校2年)

『神様の御用人』(メディアワークス文庫)
『神様の御用人』(メディアワークス文庫)

私は日頃から寺や神社を巡ることを趣味としています。神社を題材にしたこの本は魅力がたくさん詰まっていて、さらに神様について深く考えるきっかけもくれる本です。

 

ある日、フリーターの良彦は不思議な老人から謎の本を渡されます。そして小さいころよく行っていた神社の狐神である黄金から神様の願い事をかなえる「御用人」の役目を命じられたことで、神様に振り回されていくお話です。

 

この本の魅力をいくつか紹介します。1つ目は作中に出てくる神社やお店です。この本は京都や奈良が舞台で、実際にある八坂神社や都路里という茶寮などが出てきます。だからとてもリアリティーがあって本の内容が頭に入りやすいです。この本を持ってゆかりの地を訪れたくなります。

 

2つ目は神様です。この本に出てくる神様は現代風に描かれています。スイーツ好きな神様やオンラインゲームをする神様など、まるで現代の若者のようなユニークな神様たちが1話ずつ出てきます。

 

3つ目は御用人の仕事です。御用人を命じられた良彦が神様にこき使われながら願い事を達成していく過程は、読んでいてわくわくしました。

 

4つ目は豆知識です。この本にはちょっとした豆知識がたくさん出てきます。例えば、神様の数え方。実は神様は人間のように一人、二人と数えるのではなく、ひと柱、ふた柱と数えていくそうです。他にも神様の名前の由来や伝説など様々な豆知識が書かれています。

 

神様の願い事をかなえていく中で、自分自身と向き合い成長していく良彦の姿はとても感動的です。そして考えさせられたことがあります。この本には「人々が神様に感謝をしなくなった」という一文があります。私たちは当たり前のように神社に行って願い事をしていますが、もしかすると「人は願い事をするだけで感謝をしない」と思っている神様がいるかもしれません。神社に行く時は願い事をするだけではなく、きちんと神様に感謝をして手を合わせなければと感じました。

 

原渚さん
原渚さん

この本は神社や歴史が好きな人はもちろん、スイーツや旅が好きな人も楽しめる内容になっています。個人的には神様の相棒である黄金というキツネの可愛らしさにとても惹かれました。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関西大会の発表より>

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