高校ビブリオバトル2016

「本が失われた世界」の恐ろしさを想像して

『華氏451度』レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫:訳

太田絢くん(兵庫県立三木東高校2年)

『華氏451度』(ハヤカワ文庫SF)
『華氏451度』(ハヤカワ文庫SF)

「華氏451度」とは、紙が燃える時に発する温度とされています。物語の舞台は、全ての情報がインターネットやコンピューター、テレビ・ラジオのみに制限された世界です。もしも本の所持が発覚した場合、「ファイアマン」という組織によって本は燃やされ、所持者は逮捕されてしまいます。本来、ファイアマンとは消防士の意味で火を消すのが仕事なのですが、本書の中では逆に燃やすのが仕事となっています。

 

登場人物たちのやりとりで、ある人物が「かつて、ファイアマンの仕事は燃やすことではなく、家や山などで火事が起きた時にその火を消すことだった」と言うと、主人公であるガイ・モンターグは「そんなことはありえない。家とは昔から勝手に火が出ないように作られているものだ」と反論する、というものがあります。このようなシュールなやりとりが見られるのも、本書の面白いところです。

 

モンターグは、初めは模範的なファイアマンでした。しかしある日、クラリスという女性と知り合ったことで自分の仕事に疑問を抱くようになります。そして、ある仕事の現場で1冊の本と出会ったことにより、本の魅力に取りつかれ、やがては組織に追われるようになってしまいます。

 

本書は1966年に映画化もされており、映画と見比べても面白いです。僕は中学2年生の時に映画を観たのですが、当時の僕には難しく、途中で観るのを諦めてしまいました。2008年の時点でリメイクの話が出たのですが、こちらは8年経った今でも実現していません。8年も待たせるということは、相当期待してもいいのではないでしょうか。また、有川浩さんの小説『図書館戦争』と比べても面白いかもしれません。映画化もされています。

 

僕は小学校の時から本ばかり読んでいたので、初めてこの『華氏451度』を読んだとき、自分の生活の中に当たり前に存在する本が突然なくなってしまったらどうなるだろう、と怖くなりました。本が失われた世界はどんなものか、想像するのが非常に恐ろしかったのです。

 

太田絢くん
太田絢くん

ふだん当たり前のように読んでいる小説、漫画、雑誌などを持つことが突然禁止されることを想像してみてください。本書を読む際には、気楽な気持ちで読むのは、やめた方が良さそうです。みなさんにとって本がいかに大切か考えながら、読んでみてください。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関西大会の発表より>

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