高校ビブリオバトル2016
人斬りの鬼・斎藤一が語る新選組の生き様
『一刀斎夢録』浅田次郎
斎藤南さん(奈良県立畝傍高校2年)

新選組の物語ですが、主人公は局長の近藤勇でも土方歳三でも、ましてや沖田総司でもありません。斎藤一という人物です。斎藤は新選組三番隊組長として幕末の乱世を生き抜き、明治維新後には警察官となった人物ですが、沖田総司よりも強いという噂もあります。
本書で注目していただきたいポイントを2点紹介したいと思います。
1つ目は「新選組の生き様」。新選組はご存じの通り、戊辰戦争で賊軍と呼ばれながら戦って死んでいくという、ちょっとかわいそうな運命をたどりますが、隊士たちはただ死んでいくだけではなく、最後の最後まで自分の信念を貫きます。
もちろん、この本にもそれが描かれていますが、斎藤一が昔話を語るという形で、斉藤の口から隊士たちの人生が語られるため、人間味あふれる描かれ方をしています。
もう1点は、斎藤の人間らしさ。とても偏屈で、自他ともに認める人斬りの鬼であり剣がとても強いのですが、人に教えることを嫌い弟子を取ってきませんでした。しかし、1人だけ弟子を取ります。鉄之助という少年で、年の頃は私と同じくらい。そして16、7歳くらいの時に戦に行くことになります。斎藤はそれまでたくさんの人を斬ってきて、新選組の仲間が死んでも何とも思わないような冷酷な人物だったのですが、鉄之助が死んでしまうかもしれない事態になった時に、彼を生かしたいと思うようになります。

この斎藤の心境の変化というのがギャップ萌え。例えて言うと不良少年が雨の日に子犬を拾うのを見て、ちょっとときめくような。それまでずっと斎藤の口から悪かった頃の人生を語られたのを経てのエピソードなので、そんな気分にさせられるんですね。
時代小説だからといって難しくはありません。青春であったり、政治的な駆け引きであったり、語りつくせないくらいの要素が詰まっています。
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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関西大会の発表より>
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