高校ビブリオバトル2016

50回読んでも笑える! 危ない先輩たちに率いられた危ない部活って?

『キケン』有川浩

柴尾友依子さん(奈良県立平城高校1年)

『キケン』(角川文庫)
『キケン』(角川文庫)

この本は小学4年の時、母に無理矢理薦められて渋々1ページめを開いたのですが、5分後には笑っていました。腹の底から笑えて、どうしてこんな笑える小説があるんだろって思えるほどでした。

 

本格的に本が好きになったのはここからです。今では友達に薦めるほど本好きになりました。けれども、「この本、絶対面白いから読んでみて」と薦めると、いつもこういう答えが返ってくるんです。「私、本あんまり好きじゃないんで」。

 

本が嫌いな人は、活字を読むだけで眠くなるとか、つまらないとか、堅苦しいって言うんです。昔は私にもそんなイメージがありましたが、この本はそのイメージを払拭してくれます。

 

タイトルの「キケン」の意味は、成南電気工科大学にある、「機械制御研究部」という長い名前の部活の略称です。「キケン」と聞いて、「危ない」、つまりDangerの意味の方を思い浮かべる人が多いですよね。なぜ部活の略称なのに危ないという名前がついているのか。

 

表紙を見るとわかると思いますが、主人公が端っこにいるんです。主人公って真ん中にドーンといると思うのですが、この本では主人公は端に追いやられています。なんで端に追いやられているのか。大きく描かれている2人がヤバいんですね。2人は、主人公の先輩で、とにかく個性が強くて、何か知らないけど危ない人たちなんです。

 

そんな感じで、普通の小説と違って、王道というのを踏み外している表現とか、面白さが多くあります。さらに、この本は、単行本と文庫本で表紙が違うんです。面白いですね。単行本の表紙は漫画風になっています。

 

柴尾友依子さん
柴尾友依子さん

小説っていうのは、「暖かい風が吹いて陽が射している。ガタイのいい男の人が歩いていて…」みたいな長い説明なんかがあると思うんですが、この本では説明がほとんどなく、主人公の頭の中と登場するキャラクターとの会話で成り立っています。

 

とにかく面白くて私は50回も、表紙ボロボロになるくらい読んでいるんですけど、1回も笑わなかった回がありませんでした。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2016 関西大会の発表より>

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