高校ビブリオバトル2017

不老不死になったのに百年たったら自分の意思で死ねるか

『百年法』山田宗樹

多田龍平くん(西宮市立西宮高校2年)

『百年法』(角川文庫)
『百年法』(角川文庫)

永遠に生きられる、そんな夢のような手術を受けられるとしたら、その手術を受けますか。僕は受けません。永遠なんていらないと断言することもできます。それはなぜかというのが、この『百年法』に書かれています。

 

『百年法』の世界では、体が老いなくなる手術を受けられるようになりました。世の中の若い人たちは、こぞってその手術を受けに行きます。しかし、大きな問題がありました。あまりに人口が増えすぎて、食糧不足の危機に立たされてしまったのです。

 

日本の政府は『百年法』という法律を制定することによって、この事態を解決しようと考えました。これは、手術を受けてから百年経った人は自らの意思で死ななければならないという法律です。これにより、人口が常に一定に保たれるのではないかと考えられたのですが、この法律も上手くいきませんでした。

 

というのも、いざ百年が経過した時に、多くの人が逃げてしまったからです。この人たちは法律に背いているため取り締まらなければなりません。この本は、百年法という法律によって大きく人生を狂わされてしまった人々について、取り締まる人と取り締まられる人、そして一般人という三者の視点から描かれた短編集のような小説となっています。

 

しかし、ただの短編集というわけではありません。というのも、この本は上下巻に分かれており、上下巻の間でストーリーに空白が存在するのですが、空白部分を含め、上中下巻の三部構成にしても良いと思うほどの内容量があるものを、上下巻に収めることに成功しているのです。

 

この本を読むにあたって、一つのキーワードがあります。それは「説得力」。この説得力は、ドラえもんに例えて説明することができます。ドラえもんは四次元ポケットから、どこでもドアやタケコプターなど現代科学では不可能な技術をいとも簡単に繰り出しますが、僕たちは違和感を持たずにいられる。それはなぜかというと、作者の藤子・F・不二雄さんが僕たちに対して、ドラえもんが22世紀から来たネコ型ロボットだから、という理由付けをしてくれているからです。これが説得力です。

 

この百年法という本において説得力が必要な面は二つあると思いました。一つが現代科学では到達できていない不老不死。もう一つが、不老不死が実現したとして、実際に制定されるかどうかわからない百年法。この二点において、作者は僕をどのように説得してくれるのかと考えながらこの本を読んだのですが、不老不死や百年法が実現できると思わせてくれるだけの説得力がこの本にはありました。

 

この本は老若男女誰にでも読んでもらいたい本です。なぜなら命とは誰にでも共通するもので、命が有限だからこそ人は何かをやろうと思えるのです。僕はこの本を読むことで人生の有限性や大切さに気付くことができました。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>

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本が好きになったきっかけは、『百年法』です。友達に勧められて読みました!!当時から面白いと思っていたのですが、今回改めて読んでみると新たな発見があったのでビブリオで発表しました!!