高校ビブリオバトル2017
消したい後悔、会いたい人。ほんの少しだけ過去へ
『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和
小菅雪月さん(神奈川県立横須賀大津高校2年)

この本の帯には、次のようなコメントが書かれていました。
「過去に戻れる喫茶店を訪れた4人の女性たちが紡ぐ、家族と、愛と、後悔の物語。4回泣けます」と書いてありました。4回ですよ、4回! 泣ける本はいっぱい見たことがあって、それでも手に取りたくなりますが、この本は4回も泣けるというのです。私は本当にこの本で4回泣きました。
このお話に出てくる喫茶店には不思議なところがあります。
「とある町の、とある喫茶店の、とある座席には不思議な都市伝説があった。その席に座ると、コーヒーが冷めるまでの間だけ、望んだとおりの時間に移動ができるという」。
これだけ聞くと、タイムマシンのような感じかなと思いますが、実はこの喫茶店には、すごくめんどくさいルールがあります。
1つ目。過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことがない人には会うことができません。会いたい人みんなに会えるわけではないということですね。あー、残念です。2つ目。過去に戻って何をしたとしても、現在は変わりません。変わらないならどうして戻るの? タイムマシン失格じゃないかと思いました。でも、それでも十分意味があります。
私たちは、生きているときに、いくらでも後悔すると思います。私はまだ17年しか生きていませんが、それでも何十回も後悔をしてきました。もうどうしようもないなと思うときもありますが、この本を読んで「後悔ってそんなに悪くないな」って思うことができました。
私は小学生のときに、ひいおばあちゃんを亡くしたのですが、息を引き取るときに会えなかったことをすごく後悔していて、もし会えたらいっぱい謝ろうと思っていました。でも、この本を読み終わった後、私が伝えたいのは、「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」だと思えたのです。
この本は4人の女性たちを主人公とした短編集ですが、全部のお話が繋がっています。最初にこの喫茶店を訪れた女性は、ルールを聞いて「過去に戻るのはめんどくさいな」と思いつつも、それでもどうしても消したい後悔があって、その席に座ります。そして、過去に戻ることができる時間は、コーヒーが冷めるまでの間だけ。そんな短い時間ほんの少し会えるだけで、後悔は消えるのかなと思いますが、それでも、前向きになることはできます。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
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気分が落ち込んだ時、頑張りたいことがある時、私はこのシリーズを読み返します。主人公の明久くんの、誰かのために頑張る一生懸命さに心を打たれる作品です。が、この本の魅力は個性豊かなクラスメートたちとバカなことをしていくところだと思うので、一度読んで爆笑してください!
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ファンタジーやラブコメディが好きです。作家では川原礫さんです。

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