高校ビブリオバトル2017

京都好き、コーヒー好き、ミステリー好きなあなたへ

『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』岡崎琢磨

鵜飼千聖さん(岐阜県立岐阜高校2年)

『珈琲店タレーランの事件簿』(宝島社文庫)
『珈琲店タレーランの事件簿』(宝島社文庫)

皆さんに3つ質問があります。1つ目は、京都が好きですか。2つ目、コーヒー好きですか。最後に、ミステリーが好きですか。この3つの質問に1つでも当てはまった方には、こちらの本がめちゃくちゃお薦めです。

 

この本は、京都の街角にある純喫茶「タレーラン」が舞台で、理想の一杯を追い求めて京都のカフェを駆け回るコーヒー好きの青年が主人公です。その展開でおわかりかと思いますが、飲んだ瞬間、「出会っちゃった」と思うわけです。

 

そんな理想の珈琲一杯を作ってくださるのが、美しいショートボブの女性、切間美星さん。この美星さんと、珈琲好きの青年と、この「タレーラン」のマスターの藻川又次さんの3人がメインキャラクターとなって、ストーリーが展開します。

 

私が考えるこの本の魅力を3つ紹介します。まず1つ目。この本は「人が死なないミステリー」で、会話のシーンがすごくいいんです。まるで目の前で登場人物たちが会話するような感じで、すいすい読めてしまいます。

 

2つ目。京都の具体的な地名が結構出てきて、京都の街並みが見えるらしいです。私は住んだことはないのですが、京都に在住していた父が、この本読んだときに、「あ、ここ、あるある」と言っていたので、たぶん本当なのだと思います。そして随所に散らばっているコーヒーの知識。これは雑学にもなるので、おススメです。

 

そして3つ目、ここが大事なところです。この本には本文の前に、こんなページがあります。

 

「よいコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い」。

 

これはシャルル=モーリス・ド・タレーラン=ベリゴールというフランスの方の言葉です。この言葉のごとく、物語はいろいろな方向に展開していきます。そして、お気付きでしょうか。先ほどから私は「主人公」と言っているだけで、主人公の名前は出していません。実は主人公の名前にも謎が仕掛けられいて、しかも最初ほうからラストまでの伏線が緻密に張られています。短編集のように、一つ一つ物語が独立していますが、最後にすべてが見事につながります。これ以上あまりお話しできないのが辛いのですが、ここは読んでいただくしか方法がありません。

 

私はこの本は一気読みをお勧めしています。寒いこの季節、雪が降る中、この本と温かいコーヒーを片手に。紅茶派の人も、できれば今回限りはコーヒーを横に置いていただいて、温かい格好をして、一気読みを楽しんでください。

 

<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>

こちらもおススメ

『1984年』

ジョージ・オーウェル(ハヤカワepi文庫) 

アニメの中にこの作品が出てきたことがきっかけで読みましたが、読了後に背中に走ったぞわっとした感じが今でも忘れられません。「もし将来こんな世の中になってしまったら・・・」と考えながら読んでほしいです。

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『オコノギくんは人魚ですので』シリーズ

柴村仁(メディアワークス文庫) 

高校生の日常とそこに潜む謎、そして「人魚」「うじゃ」といったファンタジーな世界の3つが融合し、ほんわかして少しじめっとするような夏を思い出させる作品です。表紙もとても綺麗で、読了後は心がキラキラの輝きを宿したようでした。

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『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

村上春樹(新潮文庫刊) 

『海辺のカフカ』と同じように2つの物語が交互に進行していきますが、その2つの世界は異なっており、最初は読みながら混乱してしまいました。しかしその2つの世界がだんだん繋がっていくのが非常に面白く、様々な世界の要素がぎゅっと詰まった作品のように感じられました。個人的に村上春樹デビューにおすすめしたい本です。

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鵜飼さんmini interview

小説(群像劇、恋愛、ミステリ、日常系)が好きです。作家では有川浩さんです。

 

『シン・ゴジラ』です。戦う大人がひたすら格好良く、現在ある技術を駆使して「神」とも言われるゴジラと戦おうとするのが素敵だなあと思いました。なぜゴジラは来たのか、あの時他の人物は何をしていたのか、じっくり観察したくなりました。 

川上未映子さんの本が読みたいです。また、主人公を含む登場人物たちの穏やかで優しい日常を、ちょっとだけ覗き見できるような小説が読みたいです。