高校ビブリオバトル2017
なぜ偽の家族になれば借金は消えるのか。ラスト7行に驚愕!
『鈴木ごっこ』木下半太
小嶺賢人くん(長崎南山高校2年)

「鈴木ごっこ」って一体何なんだろう。そう思ってこの本を手に取ったのですが、その時この表紙がパッと目に飛び込んできました。1つの食卓に4枚の皿が並べられているのですが、そのうちなぜか1枚だけが割れています。なぜ1枚だけ割れているのか。そして、「鈴木ごっこ」とは何なのか。
ある年の4月1日、巨額の借金を抱えているという共通点を持つ4人の赤の他人が、スキンヘッドの謎の男から世田谷の一等地に集められるところから始まります。そしてこの借金を返す条件として、スキンヘッドの男から提示されたのが、「この1年間、誰にもばれずに鈴木家を演じる」というものでした。つまり、巨額の借金を返すために、偽物の家族、偽物の鈴木家を赤の他人4人で演じるのです。
この4人は、1人目は20代男性。2人目は30代女性。3人目は40代男性。4人目は50代男性と、家族を構成するにはなんともやりにくい年齢層の集まりでした。そこで彼らは、どのように家族を構成するか話し合いました。その結果、30代女性と40代男性が夫婦に。20代男性は、無理やり制服を着せて中学生ということにしました。一番迷ったのは50代男性でしたが、頭から小麦粉をかけて白髪ということにして、60代のおじいちゃんになりました。こうして偽物の鈴木家の家族構成ができあがり、1年間の生活が始まりました。
ちなみにこの4人の過去は、巨額の借金を抱えているだけあって、とても悲惨で地獄のような毎日を送っていました。そんな生活が、この鈴木家でもまた始まるのかと考えていた4人。しかし現実は全くの逆で、天国のような生活でした。妻役の女性はものすごく料理が上手で、毎日美味しくて健康的な食事を作ってくれる。しかも、食費はタダ。仕事もしなくていい。おまけに、恋愛までさせてくれる。こんな幸せな生活を1年間送るだけで、借金がチャラになるのです。もし私に借金があって、こんな幸せな生活を送るだけでそれがチャラになるなら、私は絶対に鈴木になります。
ですが、こんな幸せな生活を1年間送るだけで、なぜ借金がチャラになるのでしょうか。借金を返す驚きのカラクリ、そしてラスト7行のどんでん返しを読んだ時に、プロレスラーからビンタされたような強い衝撃を受けました。

このラスト7行だけを最初に読んでも、全く意味がわかりません。最初から最後まで読んでこその、ラスト7行なのです。この本が本当に大好きで、何回も読んでいるのですが、何回驚かされたか数え切れません。
この謎多い『鈴木ごっこ』を読んで、その真相に驚いてください。絶対にハマってしまう本です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
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小嶺くんmini interview

ミステリー、恋愛、青春系です。

「ぐりとぐら」シリーズを、たくさん読んでいました。多分100回は読みました。

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