高校ビブリオバトル2017
恋、ミステリー、ギャグ・・・フルコースで楽しめる恋愛小説
『失恋覚悟のラウンドアバウト』浅倉秋成
得丸彪太郎くん(大分県立別府翔青高校1年)

僕はそんなに本を読まないほうで、久しぶりに図書館にいき、目についたのがこの本です。表紙が真っ黄色で目につきますよね。それをたまたま借りて読んだら、奇跡や偶然も重なって、今ここに立っているわけです。
『失恋覚悟のラウンドアバウト』と聞いて、「恋愛小説を紹介するんだな」と思うことでしょう。けれど、恋愛だけではありません。この本には物語が4つあります。
1つ目は、ある男の子が女の子に告白します。その女の子は、友人関係やお兄ちゃんの彼女とかのトラウマがいろいろあって、彼はタイプではあるけれど振りたいんです。そして、相手も傷つけなくて自分も傷つかないためにどんな振り方があるか考えた結果、この子が言ったのが「私、魔法使いなの」です。僕はこれを読んだ瞬間、「はあ?」ってなりました。考えてもみてください。自分がこんなふうに告白したとします。まあ、実際告白したこともないし、されたこともないですが、とにかく告白したときに、相手に「魔法使いなの」なんて言われたら、「頭、大丈夫?」って思ってしまいますよね。
2つ目が、何でも盗んでしまう女子小学生の話です。ある美術館に70億円相当の美術品が納められます。その美術品を、女子小学生がいともたやすく簡単に盗んでしまうのです。
3つ目は、ブラック企業に勤めているサラリーマンの話です。ブラック企業なので辞めたい。でも、どうせ辞めるなら上司をぶん殴ってから辞めちゃおうと思って、上司をぶん殴るのですが、なぜか昇進してしまって、もっと辞めづらくなってしまいます。
そして4つ目に登場するのが、セグウェイという乗り物。軽自動車を真っ二つにして、前輪を外して、その前輪に板を付けて竹ひごを刺したような乗り物です。それを、ある科学者が改造してしまい、太った女の子がそれに乗って道路を爆走で駆け巡るのです。
こういう濃いキャラクターたちが描く物語です。その中で、一番僕が好きなキャラクターがいて、その子のセリフが「全く困った子猫ちゃんだ」というものです。三流ビジュアル系バンドかっていうぐらいのクサさですよね。しかもこの子は、ガラムマサラというカレーの香辛料を首に塗るので、カレー臭いんです。せりふもクサいし、首も臭い。そういう激臭の子が、この厚さ1.5センチの本に入っています。
こんな個性豊かなキャラたちの話が、2つが1つに、3つが1つに、4つが1つにと、大きな事件に最終的に巻き込まれていきます。目次には「5つ目」とちゃんと書いてありますが、僕はそれを「幻の5つ目」と勝手に呼んでいます。その幻の5つ目がものすごく面白いのです。

ギャグのことを紹介しましたが、恋愛の話も入っています。僕は恋愛体験はありませんが、ドラマでは見たことあるので、説明はできます。その恋というのが、ちょっとドキドキするような甘い恋となっております。
僕が紹介したのは、コース料理で例えると前菜です。次はメインディッシュですよね。お帰りには、ぜひこのメインディッシュを買って、味わってみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
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