高校ビブリオバトル2017
タイトルにふさわしい、女同士のドロドロの戦いと後味の悪さ
『暗黒女子』秋吉理香子
勝又紗姫さん(滋賀県立膳所高校1年)

私の最近の趣味は、女の子同士のドロっドロの争いを外から観察することです。いきなりなんて恐ろしいことを…。でも、女の子たちの争いを外から観察しているときに私はいつも思うのです。この人たちの水面下の駆け引きをミステリーに持ってきたら絶対面白いだろうなと。
そして見つけたのが『暗黒女子』です。とある名門女子校で、白石いつみという最もカリスマ性があり美しく誰もが憧れる生徒が亡くなる事件が起きます。このいつみ殺害事件の容疑者として挙げられたのが、いつみが会長を務めていた文学サークルのメンバーたちです。
この事件のあと、メンバーたちがサークルの定例会を開き、メンバーそれぞれがいつみの死をテーマに書いてきた小説を持ち寄り、朗読することになります。メンバーたちはその定例会で何を話すのか、いつみの死の真相とは、という内容です。
この物語は、メンバーそれぞれが書いてきた小説を順番に読んでいく短編集形式で進行していきます。そして、その定例会の中でメンバーたちは自分が思う犯人を名指ししていきます。
この本が他のミステリー作品とは決定的に違う点は、犯人が誰なのか推理をしている本人も、もしかしたら犯人の可能性がある、と最初に明示されていることです。メンバーたちには犯人の疑いがかけられています。ということは、今「あなたが犯人でしょ」と詰め寄っている彼女ももしかしたら…というドキドキ感が小説の中で味わえることです。これはなかなか他のミステリー小説では味わえない感覚です。
また、彼女たちが慎重に言葉を選んで自分への疑いを晴らしつつ、相手に罪をなすりつけてどんどん蹴落としていく様子や、その場で繰り広げられる女同士の壮絶なつぶしあい…。背筋がゾクゾクしました。
ついこの間まで仲よしだった自分の仲間を、己が疑われないようにするために殺人犯にまで仕立て上げる。そんな恐ろしいこと、私はとてもできません…多分。
しかし、ミステリーである以上、結末の意外性や、してやられた感はどうなのでしょう。ご安心ください。その点においてもこの小説は大変すぐれています。私もかなり身構えて読んでいましたが、まさか、ここまで驚かされるとは予想だにしていませんでした。読み終わった第一声が「うううわ〜」というほどブラックな内容。さすが「暗黒」と銘打っているだけのことはあります。読んでいたら手汗をかいてしまい、本を干しました。それほどの作品です。
[出版社のサイトへ]
<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
こちらもおススメ

『クワガタにチョップしたらタイムスリップした』
タカハシヨウ(講談社BOX)
タイトルのインパクトがすごい。しかも、そのままの内容です。でも、そのタイトルからは想像もできないような、感動のストーリーになっています。読んでいて心が温まりました。
[出版社サイトへ]

『ゆめにっき あなたの夢に私はいない』
原作:ききやま、執筆:日日日(PHP文庫)
挿画のある小説は、自分の組み立てたイメージが崩されてしまうことがあってあまり好きではないのですが、この小説は不気味な世界観をうまく絵にしてくれていて良作だと思います。中盤の見開きIPの絵は鳥肌が立ちました。
[出版社サイトへ]

『子供が勉強にハマる脳の作り方』
篠原菊紀(フォレスト出版)
前から好きだった脳科学者の本ということで買いました。もともとは勉強に対してやる気がなかった私に、勉強の楽しさを教えてくれた恩人のような本です。
[出版社サイトへ]
勝又さんmini interview

当時話題になっていたメンタリストのトルステン・ハーフェナーさんが出していた『心を上手に透視する方法』が大好きでした。メンタリストの視点から描かれる心理と、相手の思考の導き方が主な内容です。小学生らしくない本をねだったので祖父に心配されたのはいい思い出です。

『昭和元禄落語心中』という漫画です。登場する人々がみんなそれぞれの人情を持っていて、人間味あふれる作品でした。読んでいて、何度も涙を流しました。