高校ビブリオバトル2017
羽根が生えた転校生は天国から来た天使なのか
『天使は奇跡を希(こいねが)う』七月隆文
若林隆さん(富山県立高岡工芸高校3年)

「天使」と聞けば、どんな姿を想像しますか。僕の中では、羽根が生えていて、頭に輪っかが乗っていて、存在自体が奇跡といえるようなものです。この本のタイトルには、そんな天使が登場します。奇跡的存在が奇跡を希う…なんだろう?と思って読んだのがこの本です。
物語はどこにでもいるような普通の高校生、良史の「ぼくのクラスには天使がいる」という一言から始まります。これは実際に言ったわけではなく、彼の心の中の言葉です。
普通クラスで天使と言えば、マドンナ的な存在の女子を想像する人もいると思います。でも、そうではないのです。表紙の薄いピンク色の髪の女の子。背中に羽根が生えています。彼女が良史の言う天使です。彼女の名前は優花。少し前に転校してきたのですが、良史が驚くのも当たり前です。「転校生を紹介する」と言われて入ってきた生徒に羽根が生えているのですから。
ただ、ちょっと様子がおかしい。他のクラスメートは羽根には目もくれずに、優花に話しかけているのです。不思議に思っていた良史ですが、謎はすぐに解けました。他のクラスメートには優花の羽根は見えていないのです。ただ、良史が幻覚を見ているのかというとそうではありません。羽根に筆箱が引っかかって筆箱が飛んでいたり、扉に羽根が引っかかって、優花が「痛っ」と言ったりするのです。
良史は羽根のことについて、しばらくは黙っています。だって、これが羽根ではなく幽霊だったらみんなに話すでしょうか。「皆には見えないだろうとけど、自分には幽霊が見えます」と言う人はあまりいないと思います。しかし、優花にはばれてしまいます。片や秘密を知った方、片や秘密を知られた方。二人は気まずい思いをします。
そして、良史は優花から「私を天国に返して」とお願いをされます。普通はOKできるような頼みごとではないのでしょうが、良史はOKしてしまいます。その日からこの二人は天国に帰る方法を探していろいろなところに行ってみるのです。
その後の展開はわかると思いますが、二人でいろいろなところに行けば親睦も深まり、途中から二人はイチャつき始め、「お前ら、付き合ってんの?」といった感じになります。二人は二人でいる時間をとても楽しんでいたのです。
ただ、優花はある焦りも感じ始めていました。それは、早く天国に帰らなければ、という焦りではありません。優花にとっては天国に帰るなんてどうでもよかったのです。なぜなら、優花は天使ではないから。天国に帰してというお願いもウソです。
優花はなぜこのようなウソをついたのか、そして良史はなぜ優花の羽根を見ることができたのか。

これは、けっこう謎の多い物語です。だから、読み終わると、もう一度読みたくなってしまうのです。読みたいなと思っている人、気をつけてください。もう一回読みたくなりますからね。
最後に一つ…僕は良史には羽根が見えると言いました。でも良史だけに見えるとは言っていないのです。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
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ライトノベルが好きです。作家では、井上堅二さん、川原礫さんが好きです。

もっとミステリー系を読みたいです。