高校ビブリオバトル2017

こだわりが強いパンダ、先頭を蹴落とすペンギン‥。動物から賢さを学ぼう

『LIFE 人間が知らない生き方』麻生羽呂、篠原かをり

田端健浩くん(旭川実業高校[北海道] 3年)

『LIFE 人間が知らない生き方』(文響社)
『LIFE 人間が知らない生き方』(文響社)

旭川には、日本一の動物園と呼ばれる旭山動物園があります。小さい頃はよく遊びに行き、それまで知らなかった動物の習性を知ったり、意外な一面を見たりしたりして、とても新鮮で面白かったことを覚えています。

 

この本は可愛いイラストを交えながら動物の習性について紹介していますが、ただの動物図鑑ではなく、「自己啓発本」です。動物の習性には様々なものがあります。その動物たちが生き残るために身につけた知恵だったり、逆にその動物たちを不利な状況に追い込んでいる悪い癖だったり。そのような、様々な習性を紹介しながら、良い習性を生きる知恵として学び、悪い習性を反面教師として胸に刻むことで、「動物たちから人間としての賢い生き方を学ぼう」という作りになっています。

 

最近は、生物模倣学という学問があります。動物の体の構造などを真似て、優れた道具や仕組みを作り出そうとする学問です。例えば、蛇の牙の先端構造を模倣することで、以前より痛みの少ない注射針を作ることに成功しています。このように、生きていくうえで様々な形に進化した動物から、より優れた生き方を学ぼうとするのがこの本の考え方です。

 

この本に取り上げられている2種類の動物を紹介します。まずは旭山動物園でもトップクラスの人気者のペンギンです。可愛らしいイメージがありますが、野生のペンギンは残酷な一面も持っています。彼らは、海に漁に出る際に群れの先頭にいる1匹を海に蹴落とします。これは海の中に天敵であるシャチなどが待ち伏せしていないかを確かめる行為です。これだけ聞くと、先頭のペンギンは損をしているように感じます。ですが海の中に天敵がいなければ、最初に海に入ったペンギンは、誰よりも多くのチャンスを手にすることができるのです。このことから「人の先を行くことは危険を伴うが、その危険を乗り越えれば多くのチャンスをつかむことができる」ということが学べます。この事実から、新しい事業に打って出る人を「ファーストペンギン」と呼ぶそうです。

 

次に紹介するのは、最近赤ちゃんが生まれて、テレビなどでもよく特集されているパンダです。パンダはこだわりが強いという特色を持っていて、ササ以外の食べ物はほとんど口にしません。食べる前はよく匂いを嗅いで、お気に入りのササだけを食べるそうです。これだけだと少々変わっているだけかもしれませんが、パンダは熊の仲間、つまり肉食獣です。肉食獣がササを食べて生きていくには、たくさんの量を食べないといけません。肉を食べたほうが効率がいいのに、ササにこだわって食べ続ける。さらにたくさん食べなければいけないのに、わざわざ自分で食べる量を少なくする。このことから「強すぎるこだわりは己の身を滅ぼす」ということが学べます。雑学を楽しむだけではなく、ちょっと身になる話も聞いて、より知識を深めてみませんか。

 

[出版社のサイトへ]

<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>

こちらもおススメ

『バッカーノ!!』

成田良悟(電撃文庫)

群像劇の上手さがずば抜けています。キャラクターたちも個性的で、誰かがすぐわかるし、全員が魅力的です。

出版社サイトへ

『密室の鍵貸します』

東川篤哉(光文社文庫)

殺人事件を追うミステリーですが、コメディが多くて気楽に読めます。しかも、コメディシーンに上手に伏線が仕組まれており、ミステリーとしてもしっかり面白いです。

出版社サイトへ

 

『空の境界』

奈須きのこ(講談社文庫)

深く考えられた設定と世界観で、登場人物たちも魅力的。7章の『殺人考察』(後)は特に好きなエピソードで、初めて読んだ時は思わず涙ぐんでしまいました。

出版社サイトへ

田端くんmini interview

ジャンルは、ミステリー、ファンタジー、伝奇小説。作家は成田良悟さん、東川篤哉さん。

 

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のアニメ映画を小学2年生くらいの時に授業で一部見て、きれいな風景と不思議な世界観に興味を持ち、小説を読みました。自分が記憶している中では、小説を読んだ一番古い記憶で、まるで知らない世界を旅しているかのような気持ちになり、面白かったことを覚えています。

 

『シン・ゴジラ』を、2018年になってようやく観ましたが、どんどん進化していくゴジラの恐ろしさ、そしてゴジラに対する策を考える人間たちの描写がすばらしかったです。それぞれに恋人がいたり、途中で家族を失った人がいましたが、落ち込んでいるのを少し見せるだけにして、「人間vs.ゴジラ」を最大限に見せたのが特によかったと思います。

 

今回『LIFE』を紹介したことで、最近は人間や動物の雑学の本に興味があります。