高校ビブリオバトル2017
あの未解決事件に幼い頃の自分が関わっていた?! 事件の「真相」とは
『罪の声』塩田武士
岡部佑紀くん(青森県立弘前高校1年)

お菓子は好きですか。グリコや森永の商品はご存じですよね。それでは、30年以上前に「グリコ・森永事件」というものがあったことはご存知でしょうか。当時のグリコの社長が誘拐されたり、森永の商品に毒を入れられたりして、甚大な被害があった事件です。そのときの犯人が「狐目の男」と呼ばれていたので、そういうワードを聞いた方もいるかもしれません。『罪の声』は、この「グリコ・森永事件」を題材にしています。去年の本屋大賞で第3位にもなった作品です。
京都でテーラーを営んでいる主人公の曽根俊也は、ある日お父さんの遺品の中からカセットテープを見つけます。中身が気になって再生してみたところ、それが31年前に起きて、未解決のある事件の恐喝に使われた録音テープとまったく同じものでした。そしてさらに俊也は、それが自分の幼い頃の声であることに気付きます。では一体、なぜ自分の幼い頃の声が昔の事件と関わっているのか。そういったことを知るべく、当時の事件の真相に迫っていく、という内容です。
この31年前の未解決事件のモデルが、「グリコ・森永事件」なのです。小説では固有名詞は書き換えられていますが、当時の事件の内容がリアルに再現されています。実際の「グリコ・森永事件」は、犯人がわからず最終的に時効を迎えてしまったため、未解決です。しかし、小説では、最終的に真犯人が明かされます。つまり、作者の塩田さんが「グリコ・森永事件」を取材していく中でたどり着いた一つの答えが、ここに示されているのです。
この本の最大の魅力をお話しします。『罪の声』を読み進めていくうちに、事件の真相がだんだん明らかになっていきます。少しネタバレになってしまいますが、第2章のあたりで、実は犯人は株価操作とつながっていたことが明らかになってきます。僕はそこからページをめくる手をやめられなくなってしまいました。そういった、思いもしないような要素が次々に事件と絡んでくるのに加えて、それらが最終的には一つに繋がっていくので、パズルのピースが揃っていくような感覚を覚えました。

ミステリー作品としても十分素晴らしい作品になっていますが、ただのミステリー小説でもないのです。犯人、そしてもちろん被害者の視点からも、事件が描かれていきますが、それ以外に、犯人や被害者の家族の視点からも描かれていきます。1つの事件に対して、様々な角度から、そしていろいろな視点から描き込まれているので、本当に高密度な作品になっています。まだまだいろいろな魅力があって語りつくせません。ぜひ、この『罪の声』に耳を傾けてみてください。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 全国大会の発表より>
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伊坂幸太郎(創元推理文庫)
いつの間にか張り巡らされている伏線が、回収されていくのが心地よかったです。異国の文化、観念が知ることができて興味深いです。
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伊坂幸太郎さん、東野圭吾さん、筒井康隆さんが好きです。

気に入っていたのは、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』。少しひねくれた考えの主人公が奉仕部に入って、少し変わった方法で生徒の悩みを解決(?)していく内容です。

自己啓発本の『嫌われる勇気』を読んでから物事の考えが180度変わり、人間関係における悩みが少なくなりました。

『ガダラの豚』は、新興宗教とマジック、アフリカ呪術など未体験だった要素が詰まっている小説で、四半世紀前に書かれた作品ですが新鮮に読めました。

大どんでん返しが最後に待ち受ける小説が読みたいです。