高校ビブリオバトル2017

人間の価値はモテ・非モテで決まる?

『ぼくは勉強ができない』山田詠美

黒川優里さん(静岡県立浜松城北工業高校2年)

『ぼくは勉強ができない』(新潮文庫刊)
『ぼくは勉強ができない』(新潮文庫刊)

この本の主人公は、17歳の少年で時田秀美くんといいます。彼は女性にモテて、ちゃんと彼女がいます。うらやましい限りのリア充です。でも、彼は勉強ができないんです。そして、クラスの書記係になったときに自己紹介で「時田秀美です。最初に言っておくけど僕は勉強ができない」と言っています。

 

一般的に人は、勉強ができるか・できないかで人の価値を決めてしまいがちですが、時田くんは「異性にモテるか・モテないか」で人の価値を決めるという、ちょっと変わった価値観を持っています。この本を紹介するにあたって、印象に残ったシーンをランキング形式で発表します。

 

早速第3位から。第3位は、クラス委員の脇山くんが「お前、勉強できないだろ」と、時田くんを馬鹿にする場面です。そのとき、彼は脇山くんにこう言います。「脇山、お前はすごい人間だ。認めるよ。その成績の良さは尋常ではない。だが、お前は女にモテないだろ」。私がこのセリフが印象に残ったのは、2回目に読んだときでした。それは1回目に読んだときよりも時田くんの価値観を理解していたからです。

 

第2位は、時田くんと副クラス委員の黒川礼子さんとの会話で、時田くんが思ったことです。「幸福に育ってきた者は、なぜ、不幸を気取りたがるのだろうか。不幸と比較しなくては、自分の幸福が確認できないなんて、本当は見る目がないんじゃないか」と思っているところです。このシーンを読んで、私ははっとしました。私自身も、自分の幸福を確認するために人の不幸と比較するのはちょっとおかしいと思ったからです。皆さんはどんなときに幸福を感じますか。友達と話しているとき、部活とか好きなことをしているとき、いろんなときがあると思います。私はご飯を食べているとき、一番幸福を感じます。おいしいご飯が食べられるって、結構幸せだなと思うんですが、いかがでしょうか。

 

そして、第1位は、ある日校内で時田くんが避妊具を持っていることがばれて、生活指導の佐藤先生に怒られる場面でのこと。最終的に時田くんは佐藤先生を殴ろうとしてしまいますが、担任であって彼が所属している部活の顧問の桜井先生が助けてくれます。そのとき、時田くんが佐藤先生ではなく桜井先生に言います。「あの人たちの言う、良いこと・悪いことの基準ってちっとも面白くないと思う。良い人と悪い人のたった二通りの人間しかいないと思いますか」。私はこの場面を読んだとき、やはり物事を理解するときには、いろいろな見方で見ることが大切だなと思いました。

 

最後に、この本は最高の人気作にして最大の問題作だと思います。読んだことがある方ももちろんいると思いますが、私みたいに好きな場面を探しながら読んでみるのも面白いと思います。また、まだ読んでいない方は、私が今紹介した場面を探しながら読んでもらいたいなと思います。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2017 静岡県大会の発表より>

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黒川さんmini interview

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ノンフィクションの本が読んでみたいです。