高校ビブリオバトル2017

少女は自分の名前とどう向き合い、強くなっていくか

『本屋さんのダイアナ』柚木麻子

A・Mさん(岡山県立高校2年)

『本屋さんのダイアナ』(新潮社刊)
『本屋さんのダイアナ』(新潮社刊)

表紙のイラストに一目ぼれして、「かわいい」という理由だけで目に留めたこの小説。ストーリーもかわいらしい……と思いきや、意外にそうではありません。主人公のダイアナとその親友・彩子が、悩みや葛藤を抱えながら、少しずつ成長していき、社会人になるまでの姿に勇気をもらえた、そんな物語です。

 

ダイアナは、母親と二人で暮らす女の子。母がキャバ嬢をしているため、夜一人で過ごすダイアナは、その寂しい時間を読書に費やすようになります。髪の毛は、母に染められた金色、体は小さめ。さらに、ダイアナという名前は、「大きい穴」と書いてダイアナと読ませるのです。自分がこんな名前だったら、とても嫌ですよね。彼女がそんな自分の名前とどう向き合い、強くなっていくかが、この本の見どころです。

 

一方、ダイアナの親友の彩子は、両親に大事に育てられてきたお嬢さまです。正反対の環境に身を置きつつも、二人は共に読書好きということから、とても仲良くなります。しかし、いつしか二人は仲たがいをし、疎遠になってしまいます。二人の関係の移り変わりや進路や家族の悩み、そして自分が持っていないものを欲しいと懇願する思い。誰もが共感するような気持ちを抱え、苦しみ、もがき、成長していく二人が描かれます。

 

この本で、私がお薦めしたいポイントは2点です。

 

1点目は、大人になって書店員となったダイアナに、ある人が、『赤毛のアン』シリーズの1冊、『アンの愛情』を勧めるシーン。その人はダイアナにこう言います。

「読んでほしいのは村岡花子さんの解説だよ。きっと小さい頃は読み飛ばしていただろう?」

 

このフレーズを読んだとき、これは、自分に向けられた言葉かと思いました。その後、私は、解説やあと書きを読むことによって、その本への愛着や理解がさらに増すようになりました。

 

この本のタイトルには、「本屋さん」が付くほどですから、誰もが知っているような名作の書名が数々出てきます。読書ならではの楽しさや、本に関する知識がちりばめられていて、ますます読書が大好きになりました。

 

2点目は、作者の柚木麻子さんが描く、女性の力強さです。どの作品にも共通するのは、彼女達が自分自身のぶれない芯を強く持っているということです。この簡単そうで難しいことに真摯(しんし)な姿勢で向き合うことが、柚木さんが描く女性に共通することだと私は思います。

 

その中で、ダイアナはもっともたくましく感じられた女性です。幼いころから、悩みや葛藤と戦い、打ち勝っていくダイアナの姿に心を打たれました。

 

読後、私はこんなふうに考えるようになりました。部活で壁にぶち当たったときや、進路で悩んだとき、ダイアナだってあんなに頑張っていたんだ、と。友達との関係に深く悩んだときには、ダイアナだったらどうするかなと、考えるようになり、勇気付けられました。

 

先が見えないトンネルの中で苦しんでいる人にも、勇気が欲しい人にも、または、幸せいっぱいで、私は読まなくてもいいという人にも、ぜひ届けたいです。皆さんも、ダイアナに会いに行きませんか。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2017 岡山県大会の発表より>

こちらもおススメ

『キャロリング』

有川浩(幻冬舎文庫)

離婚や倒産などの様々な困難に苦しめられながらも立ち向かう登場人物たちと、思わず一緒に苦しみや喜びを感じることができたからです。

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『教室の祭り』

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『ランチのアッコちゃん』

柚木麻子(双葉文庫)

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mini interview

偏食家ならぬ偏読家なので、小説ばかり読んでいます。有川浩さん、柚木麻衣子さん、小川糸さんなどの女性作家さんが好きです。

『長靴下のピッピ』が大好きでした。また今でも大好きです! 世界で一番強い女の子ピッピが繰り広げる愉快な物語です。小学3年生の夏、3年生へのオススメ本一覧の本を母と私のどちらが多く読めるかという勝負を母に挑まれ、一番に読んだのがピッピでした。ピッピを読んだことが、私の読書好きの原点です。

入学受験の現代文対策も兼ねて、新書に触れようと思っています。まずは自分の興味のある分野の新書から! 楽しんで読みたいと思っています。