高校ビブリオバトル2017
バッタに食べられたい!昆虫学者がバッタの群れに突撃
『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎
有松沙姫さん(岡山県立岡山南高校3年)

私は今日、家を出てくる時に、小さいバッタを見つけました。バッタは、私から見れば、「ちょっと気持ち悪いな」くらいの存在です。でもアフリカでは、バッタは人々の生活に脅威を与える自然災害なのです。バッタにもたらされる害は「虫」に皇帝の「皇」と書いて、「蝗害(こうがい)」、またの名を「神の罰」と言います。ちょっとかっこいい名前ですが、それほど人々には恐れられているのです。
そのバッタをこよなく愛する前野さんというは、アフリカのバッタ問題を解決すべく、単身、西アフリカのモーリタニアという国に渡りました。モーリタニアは日本の3倍の面積で、その90%が砂漠です。ここに繁殖しているサバクトビバッタは、時には500キロにもわたるものすごい群れを作って、その辺にある草を全部食べ尽くしてしまう、恐ろしいバッタです。
前野さんは、幼少期にファーブルの『昆虫記』を読んだことをきっかけに昆虫学者を目指すようになり、無事に昆虫学者になりました。そして彼にはもう一つ夢があって、それは「バッタに食べられること」です。殺されるという意味ではありません。前野さんが小さい頃に、ある雑誌で女性観光客がバッタの群れを観察していたところ、着ていた緑の服を全部食べられてしまったという記事を読んで、それにすごく憧れを抱いたのです。
この本には、前野さんが実際にモーリタニアで群れに遭遇したときの写真が載っています。緑の全身タイツを着て、バッタの大群の上にいるのですが、正直ちょっと気持ち悪いですよね。前野さんの虫好きは、読者を少々置いていく傾向がありますが、バッタに興味がない人でも、楽しく読める本だと思います。
そして、前野さんはただの変な人じゃなくて、ちゃんと博士号をとった正真正銘の博士です。現地では、「何々の子孫」という意味を持つ「ウルド」の名前を授かります。「ウルド」というのは、最高に尊敬されるミドルネームらしくて、大統領や首相にも「ウルド」という名前が入っている人がいます。そのことからも、前野さんがいかに現地の人に愛されていたのかがわかります。
この本は、新書というジャンルですが、口調が全然硬くありません。私が好きな部分を紹介します。せっかくモーリタニアに来たのに、全くバッタが現れないという事態に直面した前野さんは、自分の無力さを痛感します。その時の言葉が、「バッタがいない自分なんて、翼の折れたエンジェルぐらい役立たずだ」。面白いですね。
そして前野さんは、困難にぶつかっても、そこから学んだとか、次から注意しようという前向きな捉え方ができる人です。ポジティブ・シンキングの大事さということも勉強になると思います。

前野さんは、サバクトビバッタを多くの人に知ってもらうために、この本を出版しましたが、SNS等でけっこう話題になったらしく、書店や新聞にもよく取り上げられているようです。私はそのことを知らなくて少々流行に乗り遅れてしまいましたが、まだ読んでない方には、ぜひ手に取っていただきたい本です。
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<全国高等学校ビブリオバトル2017 岡山大会の発表より>
こちらもおススメ

『ドラゴンラージャ』
イ・ヨンド(岩崎書店)
唯一ドラゴンとコミュニケーションをとれる人間「ドラゴンラージャ」を巡る、平凡な少年フチの冒険ファンタジーです。フチの人間性や、旅の仲間の個性が魅力的です。かなり長い本ではありますが、小学生でも読めるくらいやみつきになれます。
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『永遠の0』
百田尚樹(講談社文庫)
戦争をテーマとした小説は、戦争美化など批判されることが多く、この作品にもそのような声が上がりました。しかし、『永遠の0』は美化ではなく、戦争の残した虚しさが強く印象に残るような作品です。苦手意識を持っていても、一度は見てほしい本です。
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『僕と駐在さんの700日戦争』
ママチャリ(小学館文庫)
この本は横書きで書かれていて、ブログやエッセイのようにサラサラと読める本です。交番でサンマを焼いたり、ママチャリで暴走して速度計を鳴らしたり、花火大会の花火を盗もうとしたり…ハチャメチャでおばかな高校生と、大人気ない駐在のやりとりが面白いです。
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有松さんmini interview

ジャンルはファンタジーが好きですが、特にこだわりもないので、タイトルとイラストで気になった本を適当に手に取ります。有川浩先生、池井戸潤先生、東野圭吾先生、西尾維新先生、小川洋子先生が好きです。

小学生の時は「ドラゴンラージャ」と「ハリー・ポッター」シリーズをひたすら読んでいました。登下校中も読んでいたので、リアル二宮金次郎のようでした。最終巻には手を出せず、1巻から読み直すのを10回ぐらい繰り返しました。

『警察手帳』(古野まほろ著)は、警察官を目指しているので、とても勉強になりました。『三国志』では、中国の歴史、偉人にドはまりしました。

映画『グレートウォール』は、中国が舞台だったので見ました。めっちゃヒロインがきれいで、何度も見たいと思いました。映画『キングコング:髑髏島の巨神』は、スカッとしました。サミュエル・L・ジャクソンが好きです。

『アルスラーン戦記』、『君の膵臓を食べたい』、『きつねのはなし』、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』が読みたいです。