高校ビブリオバトル2018

父を殺したのは誰? 深まる謎と予想を超えるストーリー

『折れた竜骨』

米澤穂信(創元推理文庫)

安達菫さん(滋賀県立高島高校3年)

この本は、魔術が存在する12世紀末のヨーロッパを舞台に描かれたミステリーです。魔術や呪いといったものが、社会とうまく共存していて、リアリティ溢れるミステリーが好きな方もファンタジーが好きな方も楽しめます。

 

この本をおすすめする一番の理由は、読み終えた時に何度も繰り返し繰り返し読みたいと思えるというところです。作中に伏線がたくさんあり、どれも見事に回収されるので、読んでる時になんども「あ!あのときの!」となります。その伏線の中で特に印象に残ったのは「ビスケット」です。なぜビスケットなのかと思った方もいるでしょう。でもビスケットなんです。 


 

そしてなにより、この本のタイトルである「折れた竜骨」を、最後まで覚えて読んでください。それは深い深い意味が隠されています。

 

この本は架空の島である「ソロン諸島」で起こる数々の事件や謎を、解き明かして行く物語です。ソロン諸島の領主を父に持つ主人公のアミーナという少女は、ある日、魔術を使う騎士・ファルクと従士のニコラに出会います。

 

ファルクはアミーナに、「あなたの父は恐るべき魔術を使う『暗殺騎士』に命を狙われている」と告げます。突然そんなことを告げられたアミーナは、大きな衝撃を受けました。

 

ミステリーといえば事件がつきもの。例えば殺人事件。暗殺騎士に命を狙われる父に忍び寄る魔の手。アミーナの父はやはり殺されてしまいます。私たち読者の期待を裏切らない展開です。

 

そこで、アミーナはファルクに「父を殺した犯人を探して」と依頼します。アミーナの父を殺すことができたのは8人。この8人は、ソロン諸島で起こると言われている戦争のために、アミーナの父が集めた傭兵たちです。彼らを調べていくと、ソロン諸島にまつわる数々の謎に出会います。例えば、海に沈められた封印の鐘。塔の上の牢獄にいる不死の青年。物語が進むにつれて謎はどんどん深まっていきます。そして、実はこの8人に誰もアミーナの父を殺すことができないということに気がつきます。

 

私がこの本を読み終えた時、読者として素直に敗北感を味わいました。なぜなら、結末が全く予想できなかったのです。予想外すぎて逆に気持ちよくなりました。それくらいこの本は伏線回収が見事で、予想外の方向に物語が進んでいきます。

 

そしてこの本の結末には、胸がきゅっと切なくなるような感動が待っています。

 

はじめに紹介したビスケットの謎。そしてこの本のタイトル「折れた竜骨」に隠された意味とは。いったい誰がアミーナの父を殺したのか。きっと伏線回収の嵐に翻弄されて、気づいたら何度も読み直しているはずです。

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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>

こちらもおススメ

『本と鍵の季節』

米澤穂信(集英社)

米澤さんの2年ぶりの新刊ということで読みましたが、さすがとしか言えない面白さでした。ほのぼのした作品なのかと思っていましたが、所々ゾクッとするような恐ろしさがあり、読んでいてあきませんでした。

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『しゃばけ』

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安達さんmini interview

ミステリーやファンタジーが好きです。作家では、米澤穂信さんや上橋菜穂子さん、畠中恵さんや朝霧カフカさんです。

 

ビブリオバトルで紹介されていた様々な本を読みたいです。いつも私が読んでいる本とは違ったジャンルの純文学なども読んでみたいです。