高校ビブリオバトル2018
最後になっても犯人がわからない!?~脳トレ感覚を楽しもう
『どちらかが彼女を殺した』
東野圭吾(講談社文庫)
廣部太一くん(千葉県立国分高校2年)
ミステリーに、ハウダニット、フーダニットというジャンルがあります。ハウダニットは、例えば密室殺人のように、どうやってやったか方法を探すパターン。フーダニットは、誰が犯人かがわからない。例えば、閉ざされた雪の山荘で、だんだん人が死んでいって、犯人はこの中にいる誰だ?というようなパターンです。紹介する本は、題名からわかるとおり、『どちらかが彼女を殺した』というフーダニットの話です。
主人公は、妹を殺された警察官。この警察官が妹の部屋に入ったとき、妹は自殺に見せかけて殺されていました。お兄さんは警察官なので、部屋の中から、「本当は殺されたんじゃないのか」という証拠をいっぱい見つけ、それを全部かばんに隠してから、警察を呼びました。後から来た警察は、証拠がないので、じゃ、自殺かな、ということになるわけです。お兄さんは、自分だけが持っている証拠から真犯人を見つけ出して、犯人に復讐しようとしていたのです。
ただ、警察の中にも、証拠の少ないそんな状況から、他殺じゃないかと気づく優秀な人がいて、その2人は一緒に捜査をすることになります。
そして、最後の真相ですが、容疑者が男か女、どちらか1人に絞られるのですが、どっちが犯人かは最後まで読んでも書いてないんです。それがこの本の最大のポイントです。
なぜそんなことができるのでしょうか。東野圭吾さんは、最近のミステリーについて、こんな考えを持っています。どっちが犯人なのだろうと、いろいろ推理しながら読んでいるのに、最後になって、「ところでこういう証拠があったんで、やっぱりこの人が犯人です」と、名探偵が唐突に解決してしまうケースがある。強引に解決してしまうのは、ずるいんじゃないかと。
つまり、本当の推理小説というのは、考えて読み進めば、読者に犯人がわかるはずだということです。だから、これは、最後は書いてないけれど、わかる人がちゃんと、これは証拠なんじゃないかと思いながら読み進めたら、犯人がわかるという本なんです。
なるほど、東野さんの意見は、天才的発想だと僕は思いました。でも、最初出版したときには、出版社に苦情がいっぱい来たらしいです。「犯人は、どっちなんだ」「俺は一生懸命考えたけど、わからなかったぞ」「書いてないって、どういうことだ」って。それを受けて、出版社が、単行本から文庫版にしたときに、後ろに袋とじで付録を付けました。どうしてもわからない人は、そこを見れば、9割の人は、あっ、こっちが犯人だというのがわかります。ただ、付録が付いた分、本文のほうは単行本より少し難しくなったりしています。
それでもわからない人は、ググってください。インターネットを見れば、俺はわかるんだぞっていう人がどや顔で書いています。最後までもやもやすることはないと思います。
また、それとは別に、僕の友達にもいるのですが、「俺って、読み終わる前に犯人がわかっちゃうんだよね」という人。そういう人には、この本で試してほしいです。そして、本当にわかっちゃう人には、同じく東野圭吾の『私が彼を殺した』という、今度は容疑者が3人に絞られて、その中で犯人が誰かを当てるという、難しいバージョンをおすすめします。

普段本をよく読む人には、これが証拠じゃないかと思いながら、じっくりと読んでほしいと思います。普段本を読まない人には、脳トレ感覚、謎解き感覚で読んでみて、わかるかどうかというのをやってみてほしいです。
読んでもわからなくて、ググったところで面白くないという人は、友達と一緒に読んで、せえので、男、女っていうのをやってほしい。それでわかっているかどうかというのをやれば、最後まで、誰が読んでも楽しめるようになっていると思います。
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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>
こちらもおススメ
『名探偵の掟』
東野圭吾(講談社文庫)
作者の東野圭吾さんが感じた“ミステリー”への違和感をツッコンでまわるという内容で、さらに自分自身はツッコまれない本を書いたぞ、という宣伝にもなっているものでした。
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『インフェルノ』
ダン・ブラウン(角川文庫)
作者は『ダヴィンチ・コード』で有名な方ですが、彼の作品はどれを読んでも、あくまでフィクションですが、現実に起こっている問題と結びついて、現実で起こるものとしか思えなくなる表現力があり、この本はその最たるもので、とても考えさせられます。
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『鹿の王』
上橋菜穂子(角川文庫)
著者はファンタジーの大家なので、面白いのは当然ですが、やはりとても面白い本でした。現実からはかけ離れた内容を取り扱っているのに、ありありと光景が浮かぶのはやはりとてつもない表現力だと感じました。
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廣部くんmini interview

ミステリー。

『エラゴン』
このころは、厚い本を読んでいる人がかっこいいと勝手に思っていて、図書館で「一番厚い本はどれですか?」と聞いて借りた本がこれでした。並の辞書よりも厚いものですが、達成感も大きく、良い
思い出です。

『ホームレス中学生』

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』

小学生のころはファンタジーばかり読んでいたことを思い出し、またあらためて読んでみたいと思いました。