高校ビブリオバトル2018
5人は同級生の自殺を止めることができるのか?
『名前探しの放課後』
辻村深月(講談社文庫)
中岫愛留さん(茨城県立古河第一高校3年)
私の名前は「なかぐきめる」と読みますが、いつも読み方を聞かれます。中学時代、表彰を受けるとき校長先生に「なかぐきぬるさん」と呼ばれました。「愛留」という名前の由来は「愛が留まるように」という意味です。
この本にも名前に由来がある人物が登場します。まず、主人公の「いつか」くん。「いつかなりたいものになれますように」との思いでつけられた名前です。もうひとり「あすな」ちゃんという女の子がいます。「あすはきっとヒノキになろう」という意味の「あすなろ」という言葉からつけられた名前です。このふたりが中心となって、物語は進んでいきます。
この本の魅力について3つの点から紹介していきます。
まず1つめは、いつかくん、あすなちゃんたち登場人物が魅力的だということです。この2人にしゅうとくん、つばきちゃん、あまきちゃんが加わり、この5人で3ヵ月後に起こる同級生の自殺を止めようとするのですが……。なぜ3ヵ月後に起こることを彼らは知っているのでしょうか。実は主人公のいつかくん、3ヵ月後の世界からタイムスリップしてきたのです。
2つめのポイントは、いつかくんがタイムスリップに気づいた場所。私はその場所の名前を聞いたとき、笑ってしまいました。その名前は、「ジャスコ」です。「イオン」ではなく「ジャスコ」なんです。この本の初版が出たのは2010年ですので、ジャスコで自然なんですね。
私はこの本を小学生のときに初めて読み、中学生のときにまた読んで、高校生になってからもう1回読みました。そういうふうに年齢が上がっていくごとに読んでも面白いし、逆に小さいお子さんが読んでも楽しめる本だと思います。
3つめがラストです。ネタバレになるから言えませんが、辻村深月さんの作品は、最後にどんでん返しというか、謎がすべてつながるという魅力があります。結末で、読者が「あ〜〜〜〜〜〜」と言いながら、きっとまた上巻に戻って読み直したくなる。そんな面白さがあります。
さて、いつかくんが、タイムスリップに気づいたのはなぜでしょうか。それは、ジャスコの中には閉店したお店があり、看板が外されていたはずなのに、そのときは、そのお店の看板がついていたからです。「なぜ、看板がついているのだろう?」と、いつかくんは不思議に思います。

いつかくんは、あすなちゃんにその話をします。あすなちゃんはそれを聞いて「なぜ、あの看板がなくなることをいつかくんは知っているの? 」と思います。あすなちゃんのおじいちゃんが洋食店を営んでいて、その看板が外されたところに2号店を出すことになっていたんですね。
こんなふうに話は進んでいきます。ぜひこの本を読んで、「あ〜〜〜〜〜〜」という声を出していただけたらと思います。
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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>
こちらもおススメ
『かがみの孤城』
辻村深月(ポプラ社)
初対面の少年少女たちが、日に日に心を開き前に進もうとする姿は読んでいてとてもはげまされました。ラストシーンでは思わず「あー!!」と声を出してしまうほど作りこまれた心のあたたまるすてきなミステリー作品です。
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『なんでも魔女商会お洋服リフォーム支店』
あんびるやすこ(岩崎書店)
ここでまさかの児童書(笑)。小さい時からずっとこの本が好きです。本当にご用のある人にしか見つけることのできないこのお店に、なぜかたどりついてしまった人間の女の子、ナナとお裁縫魔女シルクと召使いネコのコットン。この3人のお話を読めば、大人になると忘れてしまう何か大切な物が見つけられる気がする……そんな本です。
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『タラ・ダンカン』
ソフィー・オドゥワン・マミコニアン(メディアファクトリー)
ファンタジーが大好きな私にとって、これほど発売を心待ちにしていた本はないというほど面白い本です。主人公のタラが、自分が魔術師であることを知り、悪と戦う物語です。完結してしまったのは残念です。私の青春はこの本につまっています。
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中岫さんmini interview

好きな本のジャンルはファンタジーやライトノベルです。恥ずかしながら児童書が大好きで、今でもたまに読んだりしています(笑)。好きな作家は辻村深月さんやあんびるやすこさんです。

ビブリオバトルで紹介した『名前探しの放課後』です。小学生の時、近所の図書室で、今まで読もうと思わなかった大人用の本のコーナにふらりと入りました。その中にブルーとピンクの鮮やかな本を見つけました。それがこの本との出会いです。読み終わったときには、「大人の本ってこんなにおもしろいんだ!!!」と気付きました。

中学生の時に読んだ『歌え!多摩川高校合唱部』という本です。私は中学生の時、吹奏楽部でチューバという低音楽器をやっていました。当時、低音楽器の存在が本当に必要かと悩んだ時がありました。この本には「各パートを花に例えたら?」という部分があって、ソプラノはバラ、アルトはカスミソウという中で、「ベースは花瓶ですよ」と答えていて、「花をきれいに見せるって役は、おれたちにしかできない。そうだろ?つまりおれたちは花よりすごいってことだ」と書いてありました。その日から私の目標は「花瓶」。今は、バンドでベースという低音楽器を続けています。

辻村深月さんの『かがみの孤城』です。昨年、私が2年生のとき、ビブリオバトルの茨城予選でこの本を紹介している方がいて、読みたいと思い図書館に入れてもらいました。これほどラストで感動したのは久しぶりだったので、印象に残っています。

もっと面白い運命の本に出会うため、様々なジャンルを読みたいです。