高校ビブリオバトル2018

物語なのにビジネス本?!~ネズミたちから教訓を得よう

『チーズはどこへ消えた?』

スペンサー・ジョンソン 門田美鈴:訳(扶桑社)

梅枝啓将くん(東京都立三中等教育学校4年)

アニメ『トムとジェリー』のネズミのジェリーは頭脳明晰ですが、チーズが大好物であることから、チーズを使った仕掛けに騙されてしまうことが多くあります。ジェリーですらチーズに騙されてしまうのですから、普通のネズミは、チーズのことしか頭にないと言っても間違いではないのではないでしょうか。

 

この本には、チーズを見つけようとするネズミ2匹と、小人2人が登場します。しかし、これは小説ではなく、実はビジネス本なんです。ネズミと小人が登場するのにビジネス本なのかと思ったかもしれません。たしかに内容は物語なのですが、その登場人物たちが得た教訓から私たちが学ぶ、そういったビジネス本です。

 


この本には、迷路に棲む2匹のネズミ・スニッフとスカーリー、そして小人のヘムとホーが登場します。彼らは食糧と幸せのためにチーズを探し求めます。ある時、彼らは大きなチーズを見つけます。これで安泰だと思っていると、突然そのチーズが消えてしまったのです。その出来事に驚いて、行動をとることができない小人たち。一方でネズミたちは、まるで以前からそうなることを知っていたかのようにすぐに行動します。ここから小人たちは、「チーズが大事であればあるほどそれにしがみつきたくなる」という教訓を得ます。

 

みなさんがこの本を読む上で楽しんでもらいたい点を大きく2点にわけて説明したいと思います。

 

1点目は、この物語が単純に面白いということです。ビジネス本と聞くと、哲学だったり論理だったりと小難しいというふうに考えがちですが、この本は全くそんなことありません。むしろ楽しんで読めます。

 

2点目は、自分を当てはめて考えられるという点です。この本に登場する四者は、それぞれしっかりとしたキャラクター設定がなされていて、自分がどのタイプか、当てはめて考えることができます。つまり、自分がこの本の中に飛び込んでいるかのように感じられて、今私たちが抱えている不安や恐怖などをほぐしてくれるのです。

 

題名にある「チーズ」は、食品としてのチーズではありません。夢や希望、財産、仕事、家族といったものを象徴しているのです。

 

ビジネス本と物語という、相反するようなものが組み合わさったこの本は実に面白く、説得力のあるものになっています。また、原題の『Who Moved My Cheese』の「Moved」すなわち「動かした」というのが非常に重要になります。この本を読んで、今抱えている不安や恐怖を解消してみてはいかがでしょうか。

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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>

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『チーズはどこへ消えた? 』。ビジネスという内容を、物語で表現する点がおもしろいと思いました。