高校ビブリオバトル2018
整形でブサイクが美女に、美女がブサイクに! 2人が手に入れたものは?
『整形美女』
姫野カオルコ(光文社文庫)
藤原美空さん(長崎県立長崎南高校2年)
私はブサイクです。突然何を言い出したんだこの人、と驚いたかもしれません。でも、私は自分のことを「ブサイク」だと思って、17年間の人生を生きてきました。「もっと鼻が高ければ」「もっと顔が小さければ」など、いつもそんなことを考えていました。
自分はイケメンだ、美人だ、そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、誰しも多かれ少なかれ、美人になりたいとか、イケメンになりたい、そういった気持ちを抱いているのではないでしょうか。
なぜそんな気持ちが生じてしまうのでしょうか。それはある「常識」が関係していると思います。美人やイケメンだったら、異性にモテるのはもちろんのこと、何かと得することは多そう。反対に、ブサイクであれば、異性にはモテないし、何かと損することが多そう。
でもこの「常識」って本当でしょうか。
そこで、美人とブサイクについて、とことん問い詰めた、姫野カオルコさんの『整形美女』という本を紹介したいと思います。この題名の通り、「自分がなりたい美人」になった、二人の女性が登場します。ここでキーワードになるのは、「自分がなりたい美人」です。
一人は名前を阿倍子といい、彼女の元の姿はブサイクでした。阿倍子は安易な気持ちで整形に手を出したのです。そして、目をパッチリ二重に、鼻は高く、顎はシャープに。いわゆる一般的な「美人」に整形しました。
もう一人は、美容整形においてイレギュラーなケースです。彼女の名は甲斐子。甲斐子は、実は絶世の美女だったのです。私が想像したのは、顔は女優の北川景子さんで、スタイルはタレントの叶姉妹さん!みたいな感じ (会場笑) 。
そんな完璧な姿を持ちながら、甲斐子自身は自分をブサイクだと思い込んでいたんです。もうこんなブサイクはこりごりだと、整形して新しい姿になって新しい人生を歩みたい!そういった強い思いから、ある計画を立てて、それを実行するために、目をひとえに小さく、鼻は低く、顎は丸く、いわゆる一般的な「ブサイク」に整形したんです。
もう一度おさらいしますと、阿倍子はブサイクから美人に、甲斐子は美人からブサイクに整形しました。そして、この二人の整形後の話、恋愛事情にスポットが当てられていきます。恋愛の勝ち組に見えるのは、美人に整形した阿倍子の方ですが、彼女を差し置いてブサイクに整形した甲斐子がモテ出すのです。
なぜ美人に整形した阿倍子はモテなかったのか。一方、そもそも甲斐子は、なぜわざわざブサイクに整形をしたのか。二人は、ほしい容姿を手に入れて、一体どういった結末を迎えていくのでしょうか。

「美人は得でブサイクは損」という考えは、この本を読み進める中で、「案外ブサイクっていうのも、そんなに悪くないのかもしれない」、そういった訳のわからない奇妙な気持ちに変わっていきました。美人じゃなくても、イケメンじゃなくても、人は人に好かれる。そして逆パターンだって起こり得る!
この本は、私たちが日頃がんじがらめになった常識や価値観、恋愛観、容姿観などをガラッと変えてくれる、そんな衝撃的で面白い作品です。この『整形美女』を手にとって、あなたの考え方を「整形」してみてはどうでしょうか。
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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>
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藤原さんmini interview

日常を描いた小説が好きで、最近は川上未映子さんや村田沙耶香さんの本が気に入っています。

『響 小説家になる方法』です。この映画を観たことをきっかっけに、漫画も読んでみました。主人公の「何が何でも我を通す」という生き様が好きで、これは私にはないものなので、すごく面白いです。

SFを読んでみようと思っています。