高校ビブリオバトル2018

時給11万2000円につられた12人。その驚くべきバイトとは

『インシテミル』

米澤穂信(文春文庫)

森田耕太郎さん(京都府立南陽高校1年)

時給11万2000円という破格のバイトに応募した男女12人。まるで石臼のような地下施設「暗鬼館」に集められ7日間生活します。

 

その生活が始まると、バイトは実験という名前に置き換わり、連絡する手段は一切取り上げられ、一人1個ずつ鍵が渡されます。その鍵は、それぞれの部屋に置かれていたトイボックスを開けるための鍵。そのボックスに入っていたのは、一人一つずつに与えられた、殺害手段とその凶器でした。そして、殺人ボーナス、被害者ボーナスといったお金に関するルールが言い渡される。そんな殺伐とした話です。初めのうちは殺人なんてバカバカしいと思っている登場人物たちですが、3日目に死体が発見され、そこから波乱の展開を迎えるのです。

 


この本にはいろいろなところに伏線が散りばめられています。ここで一つ伏線を紹介したいので、できれば紙やペン、スマホのメモなどをご用意ください。

 

それではまず「インシテミル」という題名をローマ字に置き換えてください。「シ」は「ci」に、「ル」は「lu」でお願いします。すると「incite」と「milu」という2つの英単語が浮かび上がってきます。「incite」は洗脳する、「milu」は石臼と日本語訳できます。時給11万2000円という破格のお金に洗脳された人々が、石臼のような暗鬼館で精神的にも肉体的にも踏み潰されていくという、ストーリーの伏線を感じることができます。

 

この話は2013年に藤原竜也さん主演で映画化されています。この映画の面白いところは、原作とエンディングがまったくといっていいほど違うところです。本を読み、映画も観ていただくことで、よりいっそう楽しむことができると思います。

 

著者の米澤穂信さんは、人間の心理描写に大きく重点を置いている作家さんです。この話には極限状態を描いたところがたくさんあります。日常生活の中でも、満員電車の中でお腹を下したときなどいろいろな緊張感がありますが、いつ殺されるかわからないという緊張感が、すごい臨場感をもって伝わってくるのは、この本の面白さだと思います。

 

『インシテミル』は500ページほどあるミステリー小説で、それが文庫が657円で買えます。ぜひ買って読んでみてください。

[amazonへ]

<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>

こちらもおススメ

『フォルトゥナの瞳』

百田尚樹(新潮文庫)

この著者さんは、情景の説明が上手く、ストーリーのテンポがいいのも特徴です。そのため、比較的読みやすく、また、ビブリオバトルで紹介されても面白そうだと思います。

[amazonへ]


『君の名は。』

新海誠(角川文庫)

映画を見た人は、ぜひ読んでほしいと思います。透き通ったような爽やかな描写で、読んでいて楽しいです。

[amazonへ]


『帰ってきたヒトラー』

ティムール・ヴェルメシュ 森内薫:訳(河出文庫)

読んでいて飽きないし、楽しい。その上でしっかりと問題提起が行われていて考えさせられる本です。

[amazonへ]


森田くんmini interview

好きなジャンルはミステリー、サスペンスです。作家は東野圭吾さんが好きです。

 

気に入っている本は『ぼくらの七日間戦争』です。本の内容は、東京下町の中学1年生が廃工場に立てこもり、子ども対大人の戦いを始めるというものです。とても人気のある本で、読書デビューするにはうってつけだと思います。

 

沢木耕太郎さん著の『深夜特急』です。僕の名前はこの方由来です。この本はインドからイギリスまでをバスだけを使って1人旅をする目的で日本を飛び出した「私」の物語です。将来海外旅行の計画の参考程度に(?)したいと思います。

 

ビブリオバトルで紹介された本を読み漁ろうと思います。