高校ビブリオバトル2018

いたずらな神様のコドモが振りまく、未来を変えるきっかけ

『神様のコドモ』

山田悠介(幻冬舎)

井上敦史くん(富山県立高岡工芸高校3年)

みなさんは「神様」と言われたら、どんな姿を想像しますか。私が想像する「神様」は、歳をとっていてヒゲが生えており、「ほっほっほ」と笑いながら空から私たちのことを見守るという感じです。しかし今回ご紹介する『神様のコドモ』という本では、そんな神様像がぶち壊されてしまったので、皆さんにもご紹介したいと思います。

 

ではまずなぜ神様の子供なのか。作品の中で、神様はダンディなスーツを着てハワイに出張に行っているという設定になっているからです。そのため、今回の主人公は神様の子供ということになっています。

 


神様の子供は、「実は出張という名のバカンスに行っているんじゃないか?」と思ったらしいです。私も同感です。

 

では、神様は普段どのような仕事をしているのかというと、日本列島を眺めるただです。しかし今回その仕事をするのは神様ではなく、神様の子供です。子供なんて好奇心が旺盛で、いろいろいたずらしちゃうのではないかと思ってしまいますが、見事に当たりです。

 

例えば、東京に息を吹きかけて竜巻警報を発令させたり、沖縄にパンくずをパラパラっと落として、沖縄の人たちが「雪だ雪だ!」と喜んだり。一番ひどいのは、チョココロネを釣り糸に引っ掛けて空から垂らしてお腹の空いている人間を釣り上げるんです。こんなバカな話が、230ページの中に42個も入っています。

 

この本の帯には、「1話3分で終わる42の物語」と書いてあります。1話3分とありますが、実際は1,2分で終わります。私は読書が遅くて、1冊読み上げるのに1~2週間はかかってしまうのですが、この本は4日で読み終わりました。

 

すぐに読み終わる理由はもう一つあります。この本は、2016年3月に発売されましたが、「ドローン」や「キラキラネーム」のような近年の話題が入っています。そのため、事前の情報が要らず読むだけで内容が入ってきます。

 

先ほど42の物語があると言いましたが、明るい話ばかりではありません。怖い話や感動する話、考えさせられるような話など幅広いジャンルの話があって、飽きることなく読み上げることができます。

 

私がこの本を読み思ったのは、生き物というものは「きっかけ」によって幸せになるか不幸になるかが変わっていくものだ、ということです。この本には、神様の子供がたくさんの生き物にきっかけを与え、未来がガラリと変わるシーンがいくつもあります。このように我々は何かきっかけを受け取り、そして他の人が我々の総合的な評価を変える。こういうことが自分たちの未来につながるのだと思いました。だから、誰かが困っていたら、その人をサポートすることが大事なんだと改めて感じました。

 

最後に皆さんに「きっかけ」を一つ。この本最後の方に「赤色のボタンと黒色のボタン」という話が出てきます。赤色のボタンを押せば地球が3分間止まる。しかし、また押すためには1年経たなければならないという、タイミングの難しいボタンです。そして黒色のボタンは、神様から「絶対に押すなよ」と言われている、かえって押したくなってしまうボタンです。

 

この物語の中では、今日本で予言されている、ある不幸なことが起きます。その時神様の子供は、赤色と黒色のボタンを2つ同時に押してしまいます。なぜ神様の子供は赤いボタンだけでなく黒色のボタンも押してしまったのか、そして一体日本に何が起きてしまったののでしょうか。

 

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>

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