高校ビブリオバトル2018

使えない文字があることで、同じ物語でも作風ががらっと変わる

『りぽぐら!』

西尾維新(講談社)

三島昂星くん(和歌山県立紀央館高校3年)

みなさんは西尾維新という作家を存知でしょうか。数年前にドラマ化した『掟上今日子の備忘録』の原作や、人気シリーズの『化物語』など、大人気のベストセラー作家です。紹介するのは、その作品の中でも一風変わった『りぽぐら!』です。

 

『りぽぐら!』は短編小説ですが、一風変わっているのは、この小説には「特定の文字や言葉を使わない」というルールがあることです。

 

 


はじめに何の制限もなく小説を書きます。次に、10個のひらがなの使用を禁止して同じ内容で小説を書きます。そんなことしてちゃんと読める小説になるのかと思われるかもしれませんが、使用できなくなった言葉があっても、別の言葉を使うことでうまく表現することができます。例えば物語の途中に忍者が出てくるのですが、禁止されている10個のひらがなの中に「し」が、入っているため、「忍者」という文字が使えなくなるので、「乱破」として登場します。「乱破」とは忍者の古い言い方だそうです。

 

さらに、文字が制限されることで、作風もがらっと変わります。例えば、一つ目の話は妹が殺人鬼という設定で、兄がそれをどうにか救おうとします。制限がない時は、ライトノベルのような現代的な文体なのですが、文字を制限されると、主人公の一人称が「拙者」に変わるなどして、古文のようになります。私は普段は古文を読まないのですが、これはとても面白かったです。

 

二つ目は借金をした男が命を懸けたゲームに挑む話、三つ目は犯罪がなくなった世界での話です。私が特に好きなのは、この三つ目です。その世界では犯罪が完璧になくなっていますが、全ての場所に監視カメラが設置してあって、犯罪ができないようになっているのです。そして、良いことをするとお金がもらえます。みんなお金をもらうために良いことをして、犯罪も起きない。そんなユートピアのような世界ですが、その世界にはその世界なりの悩みがあるというのがとても心に残りました。

 

他にもこの本の面白さにつながっているのが、表紙からもわかる通り、15人のイラストレーターによる挿絵が入っていることです。しかもそれぞれが有名なイラストレーターで、画風も全員異なります。挿絵が変わると本の雰囲気も変わります。ですから、この15人のイラストレーターの方たちも、この本の自由な表現を手助けしていると思います。

 

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<全国高等学校ビブリオバトル2018全国大会の発表より>

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西尾維新の作品や、今読んでいる奈須きのこの『魔法使いの夜』の続きを読みたいと思います。