大学生が薦める、高校時代に読んでおきたい本

~大学の授業と本を紹介

守谷優希さん(国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科3年)

                                                                                              ※学部・学年は20183月現在

高校時代に読んでおきたい本

『大学教育について』

ジョン・スチュアート・ミル(岩波文庫)

皆さんは、なぜ大学に行きたいですか。考えはいろいろだと思いますし、その考えに不正解はありません。ですが、本質的に大学教育とはそもそもどういうものなのか、どうあるべきものなのかということを、やはり高校生のうちに知っておくことは重要だと思います。それを知っておくことで、大学生活のスタート一歩目から自分のやりたいことを明確にしておく準備ができると思います。

 

それに、専攻に限らずこうした哲学的な古典を読むことは本当に重要です。著者(というより、これは講演で話した文言ですが)のジョン・スチュアート・ミルは19世紀イギリスの哲学者で、政治や経済などで大きな業績を残した偉人です。そうした偉人の考えに触れて、そして自分なりに考えてみてください。もしこれまでこうした哲学書を読んだことがないならば、この一冊を皮切りに、ぜひいろいろな本を読んでみてください!

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進路について話そう

■進路を決めたきっかけ

 

私は専攻が国際関係で、その中でも専門が安全保障、特に今はテロリズムを中心に研究しています。日本で生まれ、9.11の後のアメリカで育ちました。やはり世界貿易センターに飛行機が突入する映像は衝撃的でしたし、そのテロ攻撃の影響力の大きさはアメリカで生活していて感じる部分がありました。日々の中東での対テロ戦争の報道なども見ていて、日本で生まれた子供にはかなりショッキングだったことを覚えています。今思い返すと、やはりそうした自分の育った環境が今に影響していることは感じます。

 

■進路を決めるにあたって、とった行動

 

まず国際関係学が学べる大学を探しました。多くの大学で国際関係学を学ぶことができ、大学にはそれぞれの理念がありますから、その学風に自分が合うかどうかも踏まえて大学を選びました。また、調べていく過程で、私は在EU日本国次席大使も務められた植田隆子教授(残念ながら2018年3月を以て大学を去られてしまいましたが)の存在を知り、「この先生の下で学びたい!」と思い、ICUを選びました。

 

ICUの受験方式はとても特殊です。どれだけ対策を必要とするか、どんな対策を必要とするかはおそらく人によるかと思いますし、私はほとんど特別な対策はしませんでした(他の大学も併願していたので、普通に受験勉強をしていました)。ですが、やはりどういう対策をすべきなのかを判断するために、入念に納得するまで調べました。

 

■進路や大学を決める際に、大事だと思うこと

 

重要なのは偏差値やネームバリューではなく、その大学の教育の理念は何か、何が学べるのかをきちんと調べて把握して、それが自分自身が大学に求めていることと合致することです。そのためには、自分がそもそも大学に行く必要があるのか、行くならばなぜ行くのか、行って何をしたいのかを考え抜くことが重要で、大前提です。その上で偏差値やネームバリューではなく、本当の意味で大学を見て、知って、進路を選んでください。受験勉強は大変だと思います。よくわからず漠然と大学に行くと思うのと、明確な目標を持って大学を選んだのでは、勉強に望む覚悟に大きな差が出ますし、自然と勉強に身が入ると思います。

 

上に書いたことは、あくまで進路や受験に関してのことです。大学生活は楽しいですが、高校生活もそれに負けないぐらい楽しかったです。残りの高校時代、とにかく思いっきり生きることこそが何よりやっておくべきことです。勉強したいと思うことがあるなら勉強してください。突き詰めたいと思えることがあるなら突き詰めてください。夢や目標があるならそれに向かって努力してください。悩みがあるなら悩み抜いてください。友達と遊んでください。喧嘩もしてください。先生に怒られることもあるでしょう。誰かを好きになったり、デートをしたり、恋人ができたり、フラれたり。恋愛も大切です。

 

今を思いっきり満喫してください。高校時代は、高校を卒業したらもう戻ってきませんから。

 

■国際関係に進みたいなら高校時代に読んでおきたい本

『国際政治』

高坂正尭

(中公新書)

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『虐殺器官』

伊藤計劃

(ハヤカワ文庫)

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『三酔人経綸問答』

中江兆民

(岩波文庫)

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大学の授業を紹介! 面白いと思った授業はこれだ

■International Politics (邦題:国際政治学)(毎年開講。日本語開講のもの、英語開講のものがそれぞれ別学期に開講)

1週間に3コマ、国際政治学の主要な理論を学びます。ただ教授の講義を聴くだけでなく、毎週学生のグループが割り当てられて、プレゼンテーションを行います。毎週、授業までに課題文献を読むことが要求されますし、教授も積極的に学生に意見を発言するように求める授業です。

 

ICUという大学はメジャー制を採用しています。3年目からそれぞれの専攻を選ぶことになり、選択するためにはそれぞれに設けられた要件を満たす必要があります。国際関係学専攻では「国際関係史」、「国際関係学概論」、「日本の国際関係」、「国際政治学」のうち二つで平均評点2.5以上の取得が選択要件になります。これは要件科目ですので、国際関係学を専攻するつもりなら履修することをお勧めします。

 

国際関係学を勉強する上では歴史的に国際関係を捉えることと、理論で捉えることが大きな二つのアプローチになります。この授業では、リアリズム、リベラリズムといった主流の理論、それ以外にもコンストラクティビズムなど、国際関係を勉強していく上で、よく用いられる理論を学びます。

 

この授業は、高校までと違い、教授と生徒の間で議論をしながら進んでいきます。ただ一方的に理論の話を聞かされるのではなく、考えながらクラス全体で問題に取り組んでいくので理解が深まります。特に大学の、それも少人数教育ならではの授業の進め方です。それだけでなく、理論に基づいたケース分析の発表を割り当てられた学生が行うので、教授からだけでなく、同じ学生からも学ぶことができて刺激になると思います。

 

この授業は、英語開講と日本語開講のものが用意されています。私としては英語開講の方を履修することをおすすめします。ICUの教育の大きな柱に日英のバイリンガル教育というものがあります。このサイトをご覧になっている方のほとんどが、日本語が母語だと思います。ぜひ英語でも学ぶことに挑戦してみてください。また、英語の方を担当されている先生は、私の恩師でもあるJae-Jung Suh教授です。Suh教授は、ICUに来る前は米ジョンズ・ホプキンス大学SAISという世界でも国際関係学分野ではトップの大学院で教鞭を執られており、朝鮮研究ディレクターまでやられていた方です。世界トップ水準の学者の授業を受けるチャンスはめったにありません。ぜひ履修してみてください!

 

■H2:言語教育(隔年開講)

言語教育、言語学習、言語学という視点から、人はどう言語を学ぶのか、そもそも言語を話せるということはどういうことなのかを学びます。

 

もし皆さんがICUという大学を選ぶのであれば、それはやはり英語を話すという目標を持ってキャンパスに足を踏みいれることになるでしょう。ただ英語を学ぶのではなく、そもそも言語を学ぶとは学問的にどういう研究がなされているのかという、少し別の視点から向き合ってみることは面白いと思います。

 

もしあなたが海外経験の全くない方なら、一度は外国語も話せる帰国子女を羨んだことがあるかもしれません。もしあなたが自分の母語以外に何か言語を話せる帰国子女であるなら、一度は母語しか話せない人から妬まれたことがあるかもしれません。どちらにも、それぞれの苦悩があります。言語教育というテーマの授業での議論を通じて、少しでも学問的な視点から言語を学ぶ、話すということがどういうことなのかがわかったならば、それは互いに歩み寄る素晴らしい機会になると思います。ICUには、帰国子女だったり海外経験が一切なかったり、そもそも国籍が日本じゃなかったり、様々なバックグラウンドを持った学生が集っています。その環境でこの授業を受けられることは、きっととても魅力的で、本当に恵まれていると思います。