大学生が薦める、高校時代に読んでおきたい本
~大学の授業と本を紹介
翁雨音さん(北京大学 School of Journalism and Communication 2年生)
高校時代に読んでおきたい本
『かぜのてのひら』
俵万智(河出文庫)
短歌を詠むのが趣味で、歌集を時々読みます。現代短歌の元祖ともいえる俵万智先生「サラダ記念日」で有名ですが、他にも非常に良い歌集を出されています。『かぜのてのひら』は俵先生の第二歌集で、高校教師をしていた時期に書かれたものです。日常生活で得られた感慨を口語と文語のちょうどいい組み合わせで詠っています。以下は作中のおすすめの短歌です。
チューリップの花咲くような明るさであなた私を拉致せよ二月
ひかれあうことと結ばれあうことは違う二人に降る天気あめ
潮風は今いちばんの夢もよう二人の時計の針さびてゆけ
いかがですか。このような詩性あふれる歌がたくさん収録された『かぜのてのひら』をぜひ手に取ってみてください。
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進路について話そう

■海外の大学で学ぶことを決めるきっかけ
高校2年の夏に留学フェローシップの先輩方が勧めてくれました。もともと海外留学には興味がありましたが、交換留学か大学院で行ければいいな、というくらいの「いつか」の話でした。サマーキャンプに参加して実際に学部留学をしている先輩方に出会い、自分もできるかもと思い立って、日米併願を知り、決めました。
サマキャンが終わって数日後、当時実行委員長だった高島崚輔さんと、ファミリーのメンターだった前田智大さん(※)にお茶に誘われ、「やってみなよ!」と強く勧められたのが決定打になりました。その後本屋に連れて行かれて赤本の横の棚にあるSATとTOEFLの本を見せられ、内心青ざめつつもアメリカ受験へのイメージが膨らんでいきました……。
■進路を決めてから行ったこと
高3の夏は、TOEFLやSATを受験しながら全国模試にも参加し、赤本を解きながらエッセイも書くというまさに地獄の夏でした。でも、同じことをして乗り越えた先輩方がいると知っているから、自分も頑張ろうと思えました。
エッセイ執筆の過程で、自分が今までしてきた学習や課外活動が大学以降の学びにどうつながっていくのか、深く考えることが多くありました。結果的に北京大学に入学した後もこういった自己分析は欠かせないものとなり、卒業後にやりたいことを見つけ、それまでに習得すべきスキルを見極めるのに役立っています。
■進路や大学を決める際に、大事だと思うこと
最初から志望校を絞りすぎないでください。最も理想的なのは実際に志望校を訪れてみて決めること。キャンパスで在学生の人に話しかけてみると校風がよりはっきりわかると思います。距離やスケジュールの問題で海外の志望校にcampus visitするのが難しいという方は、志望校に通っている日本人の先輩と仲良くなって、たくさん話を聞くのもいいと思います。
■さらに高校時代に読んでおきたい本
大学の授業を紹介! 面白いと思った授業はこれだ

■名記者専題(Seminar on Famous Reporters)(2年後期、ただし北京大学では学年にかかわらず自由に授業を選択してよいので、私は1年後期で履修しました。)
実際のメディアで勤務している記者や編集者の方々のレクチャーを聴きます。昨学期はCGTNやGlobal Timesなどからゲストを招待しました。また、昨学期は特別で、大学創立120周年記念のため、北京大学テレビ局と提携のもと、学期を丸ごと使って留学生のalumniをインタビューするシリーズ番組を制作しました。
授業が全て英語で行われるため受講を決めました。
番組のインタビューも英語で進行し、編集で英語と中国語の字幕を付けるのですが、中国国内と海外の視聴者両方に見てもらえるよう、語感や文化的背景にもこだわった翻訳をしました。母国と中国の架け橋として成功を収めた方々の話を聞くことができ、また学校名義で作品を発表することからプロとして求められる品質を追求する姿勢が身に付きました。
■哲学導論(1年後期)
プラトンと朱熹、カントと王陽明など西洋と中国の哲学者を比較します。時代も国も異なる哲学者たちの思想が意外な共通点を持っていることが発見できます。
高校の時から哲学オリンピックに出場するなど哲学が大好きだったので履修しました。授業の中でLGBTや自殺など社会的な話題を扱うこともあり、議論に哲学の考え方を導入することでその場にいる学生が個人的な人生観から離れて自身の中に複数の視点を持つことができるように工夫されていました。