ふくろう先生の新書探検隊

第2回 地球温暖化問題に挑もう

『地球温暖化 ほぼすべての質問に答えます!』

明日香壽川(岩波ブックレット)

東北大学東北アジア研究センター教授で、環境政策論が専門です。

気温上昇の原因は二酸化炭素にあり。その削減に向けた国際協力を訴える

読みやすく書かれています。自然科学的側面と社会科学的側面の個々の疑問点について、簡単な問答が述べてあり、その次にそれぞれの解説が<より深い話>という項目で記載されます。

 

温暖化が起きているのかどうか、次にその原因が二酸化炭素というのは本当なのかという議論があります。ここでは、二酸化炭素悪人説を取り上げています。

 

まず本当に温暖化しているのでしょうか。夜間衛星写真や都市部以外の海洋などの平均気温などの測定データはやはり気温上昇を示しています。過去100年の間に、約0.7度上昇しています。

 

そして、その原因については、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などが特定の波長の赤外線を吸収するガス)、特に二酸化炭素の増加が平均気温の上昇を説明できるとしています。

 

普段、日中に太陽から降り注ぐ光と熱は、地球表面や海洋などを暖め、夜は逆に地球表面に溜まった熱が赤外線として上空に、そして宇宙に放射されます。こうして地球全体の温度は一定に保たれています。しかし、温室効果ガスは、夜地球から宇宙に向けて放射される赤外線を吸収して、地球の熱の放散を妨げます。だから二酸化炭素が多くなると、地球が冷えにくくなり、平均気温が上昇します。産業革命以来、石炭・石油の使用はじめ、人間の活動により、二酸化炭素が30%、メタンが2倍に増加しています。それらの増加の傾向が、地球平均気温の上昇の傾向をうまく説明できるとして、二酸化炭素原因説が支持されています。

 

(ただし、温度上昇の理由は他にもありそうです。都市部で気温が高くなる現象をヒートアイランド現象と呼びますが、平均気温測定にはその気温データも入っているので、原因の一部になる可能性があります。また、太陽の黒点活動により放出される放射線の量が左右され、地球に降り注ぐ放射線の量が変化し、それが地球の気温に影響する可能性もあります。その他にも種々の原因の可能性があり得ます。)

 

 

もう一つの側面は政治や経済にかかわる話です。温室効果ガスの排出は地球規模で行われます。それを減らすには、国際的な話し合いが必要です。京都議定書という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。1997年京都で開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3。地球温暖化問題について、締約国の間で物事を決定するための最高決定機関で、その第3回目の会議)で議決された温暖化対策に関する合意文書のことです。先進国における温室効果ガス排出量の削減率を数値目標として各国別に定めました。しかし、アメリカや中国が参加しなかったことから、不公平だなどの声が上がりました。(その後、2020年以降の温暖化対策を定めた「パリ協定」が2016年に批准されたが、一旦批准したアメリカはトランプ政権となり2017年現在、離脱を表明している。)

 

温室効果ガスによる地球温暖化が本当に起こっているのなら、全地球規模で対策を採らない限り、近い将来とんでもないことになると予想されています。例えば、あるシミュレーションによる予想では、2100年には2度平均気温が上昇し、極地の氷が溶けたりして海面が1メートル上昇するなどと言われています。そうなると、局所的な異常気象どころではなくなるかもしれません。

 

シリア難民やイスラム国の問題など、現代の国際紛争では、当事者だけでなく大国を巻き込んだ利害対立が激しく、なかなかいい解決法がないようです。しかし、地球温暖化問題は、例えば宇宙人が地球に責めてきた状況に似ていて、地球全体が共に協力して何とかしない限り、人類全体が厳しい環境に曝されることになります。国際間の協力により、なんとか次世代の地球の環境を守りたいですね。

 

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高校生からもひとこと

先進国と途上国は協力して

 

世界的な対策として、各国の温室効果ガス排出量の削減率を数値目標として定める「気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が1995年から毎年開催されている。しかし、数値目標をめぐり、先進国と発展途上国の間で確執が生まれている。先進国は、人口増加や生活の向上によって急激に排出量が増えている途上国が削減すべきだと主張、逆に、途上国が今まで大量の温室効果ガスを排出してきた分、先進国が削減すべきだという主張だ。

 

私はこのような対立は、どの国にとってもメリットはないように思える。先進国は、技術の乏しい途上国に協力し、できるだけ効率よく、地球に優しい生活ができるように支援すべきだ。また、途上国はその支援に応え、エコな発展のため努力し、先進国に資源の生産や商品の製作などの点で協力し、お互いの利益のために協力関係を築ければ、人間にとっても地球にとってもよりよい生活にしていけると思う。(松ぼっくり さん)