ふくろう先生の新書探検隊

第2回 地球温暖化問題に挑もう

『気候変動とエネルギー問題 CO2温暖化論争を超えて』

深井有(中公新書)

産業技術研究所、東京大学生産技術研究所客員研究員等(現在は、中央大学名誉教授)で、金属物理学とくに金属―水素系の物性と材料科学が専門です。

二酸化炭素悪人説に反対。研究者は様々な仮説を慎重に検討すべし

地球温暖化、二酸化炭素悪人説に疑義を唱える立場からの新書です。まず、2009年に起こったクライメートゲート事件のことを取り上げています。

 

COP(気候変動枠組条約締約国会議。地球温暖化問題について、締約国の間で物事を決定するための最高決定機関)などには、IPCC(IPCCとは、気候変動に関する政府間パネルのことで、国際的な専門家による、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構のことです)の報告を基に行われています。そのIPCCの報告にはいろいろなデータが利用されるのですが、そうしたデータを提供している研究所の1つ、英国イーストアングリア大学気候研究ユニットのコンピュータから、2009年11月、メール交信記録とデータが流出しました。その中で、気候温暖化を印象づけるためのデータ作りや、都合の悪いデータが公表されるのを抑えるための企みなどが記録されていました。

 

本書では、その内容について詳しく書かれています。要するに、地球温暖化や二酸化炭素原因説について、それまでにも出されていたいろいろな反論や疑問を封じ込めようとする企みと言えるようです。

 

垣間見える点は、それぞれの属するグループや学問分野が少し異なり、お互いの理解が浅く、逆に予算獲得などの利害対立もあるといった、本来科学研究者にあってはならない動機や原因です。少し以前に日本でも起こった理化学研究所のSTAP細胞事件も同じような原因で起こったのかもしれません。

 

最近は学問研究分野が細分化され、同じような分野でも少し異なれば、お互いの分野の内容を理解するのが難しくなり、また予算獲得競争も激しくなっているために、類似分野のメンバーを予算から排除しようとする傾向が強まっているのではないかと心配します。

 

学問研究に対しては、研究者は広く真摯に取り組み、公正な行動を心がけるべきだと思います。本来、オープンで真摯な反論が出されるお陰で、いろいろな仮説が検証されてものごとの核心に近づくはずです。そんな過程を遮断してしまうと、正常な科学技術の発展が妨げられることになります。科学的に真実に近づくために、反論も含め、いろんな立場のいろんな意見を慎重に検討すべきですね。皆さんも将来、学問研究に身を投じる時には、広い視野と広い心を持って、オープンに真剣に真理に邁進していただきたいと思います。

 

本書の中の地球温暖化や二酸化炭素悪人説に対するいろんな議論は細かくは紹介しませんが、例えば、地球平均気温測定では、ヒートアイランド現象の起こっている都市部のデータも含まれているから、そのせいで見かけ上平均気温が上昇しているのではないかなどという指摘がなされています。その他、放射線の効果や古気候学(地球が誕生して以来、地球の歴史に応じて、どのような気候や気温であったかなどを調べる学問分野)からの情報などを基に議論しています。

 

そうした議論のあとに、エネルギー資源枯渇の問題に進み、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギー利用技術の現状に触れます。その中で、再生エネルギーとしてのバイオ燃料に注目しています。そして、著者は夢のエネルギーとして核融合の実現可能性に期待しています。最後に、今後のあり方や行動方針を提案しています。

 

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高校生からもひとこと

温暖化は本当に起きているのか。疑うことも必要だ

 

地球温暖化は二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスによって引き起こされていると、半ば「前提」として定着している。では、なぜ二酸化炭素が温暖化の犯人なのか。そもそも温暖化は本当に起こっているのか。その前提を疑う見方、かき消されてしまう地球温暖化否定説に触れることも必要なのではないか。そう思い、地球温暖化説に否定的なこの本を読んだ。

 

筆者によると、地球温暖化説の根拠となっているデータには信憑性が疑われるものが多くあると言う。また、この本では温暖化対策の旗頭である国際機関「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の腐敗を描いており、その裏には二酸化炭素の排出枠を巡り動いている巨額のマネーが関係しているのだと言う。その上で、政府は温暖化に無用な税金を注ぐのではなく、次世代のエネルギーを開発する資金として使うべきだと結んでいる。

 

この本を読んで思ったのは、こうした邪論ともいえる主張に触れることも大切だということだ。一般常識を疑ってかかる主張は容易には受け入れがたく、ともすればうさんくさいと感じてしまう。だが、聞く耳を養い、真実を見極める力をつけるためには、こうした多様な意見に接することが必要だ。(コウノドリ くん)

 

温暖化は太陽活動の影響か。他の可能性も否定できない

 

地球温暖化の原因は、人々に知られていること以外にもあると思い、この本を読んだ。本によると、二酸化炭素が温室効果で気温を上昇させている可能性は否定しないが、その効果は小さいということ。太陽活動に伴う宇宙線の影響が気候変動の真の原因だということだ(太陽活動が弱くなると宇宙線の量は増大する、宇宙線が雲の発生に関係している など)。

 

僕は、資源開発が行われる以前にも地球温暖化はあったことから、宇宙線の影響かどうかはともかく、温室効果ガス以外の影響を受けていると思う。関係がないと思うことでも関係していることがあるので、一つの事柄に対して原因や答えを一つと決めつけないこと、そしていろいろな立場から様々なことに向き合ってほしいと思う。(T.H くん)