ふくろう先生の新書探検隊

第3回 今の世界は資本主義による市場に支えられている?〜経済学に学ぼう

<その1>資本主義を考えてみる〜まずは基礎

『金融がやっていること』

永野良佑(ちくまプリマー新書)

外資系金融機関を経て、フリーの金融アナリストです。

「今すぐには使わないおカネ」を持っている人から「今すぐにおカネが必要」な人へ

金融機関には、銀行をはじめ、保険会社や証券会社、投資顧問会社などがあります。そして本書は、金融の存在意義、「決済」についての説明、そして「今すぐには使わないおカネ」を持っている人と「今すぐにおカネが必要」な人とのおカネの橋渡しをするという金融機関の仲介機能、すぐには使わないおカネを持っている人がおカネを増やす方法、特に証券会社についてわかりやすく解説しています。そして最後に金融の世界の在り方についての筆者の考えを示し、金融情報の集め方など金融の世界で生きていくためのノウハウを紹介しています。

 

おカネには「交換の手段」「価値の尺度」「価値の保存」という機能があります。すなわち、おカネと交換して商品を得ることができ、商品の値段によって商品の価値がわかり、腐らないので貯蓄しておくことができるということです。

 

「決済」とは、おカネを受け取るべき人が、おカネの受け取りを完了することです。決済は、現金を用いなくても、銀行などの預貯金の口座間のおカネの移動(数字の増減)だけで行うことができます。そうすると、預貯金はおカネそのものと考えていいことになります。そしてある金融機関がおカネを借りたい人に融資をすると、そのおカネはどこかの金融機関の預貯金になります。ということは、金融機関全体で見ると、元手が無くてもいくらでも融資することが可能になります。このような活動を金融機関の「信用創造」と呼びます。しかし制限がなければ、無限に信用創造できてしまうため、それを制限し、銀行の信用を確保するために、銀行自身の自己資本比率規制や預金準備率(一般の銀行が保有する預貯金残高の一定割合の金額を中央銀行に預けることを義務づけるもの)などがあります。

 

銀行は、おカネを融資してその利息で利益を上げています。「利息」とはおカネのレンタル料であると考えるとわかりやすいでしょう。銀行はおカネを貸すことでおカネを増やすことができるのです。

 

企業は、株式や社債を発行して必要なおカネを手に入れます。社債とは、企業が発行する債券のことで、いわば借金です。「国債」という言葉を聞いたことはあると思いますが、これは国が発行する債券です。この債券は、買ったり売ったりすることができます。そして、我々は債券を買って利息を得たり株を買って配当金を得たり、あるいは株の売り買いで利益を得たりすることで、おカネを増やす(資産運用)ことができます。本書では、このようなおカネを増やすためのいろいろな方法も説明していますので、興味のある方は勉強してみてください。

 

最後に筆者は、リーマンショック問題など世界金融危機の経験を踏まえ、資産運用に血道を上げる金融機関を諫めて、「すぐに使わないおカネを持っている人から、おカネを必要とする人におカネを回す」という本来の役割に戻るべきだと、つまり「本業回帰」を提言します。また赤字財政と国債についても注意喚起をしています。そして、将来金融関係に携わろうと思っている人、金融についてより深い知識を得たいと考えている人のために、金融の先輩として、アドバイスをしています。新聞の金融記事の読み方から、インターネットやその他メディアの金融関連情報へのアクセス法、その読み方まで、丁寧に説明しています。金融のことを知りたい方にはお薦めの本です。

 

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高校生からもひとこと

最大限の利益を生む思考を学びたい

 

大学に入ったらお金や経済の仕組みに関して学びたいと思っている。本書からは、金融の全体像が捉えられた。経済の中で生きていくには、同じものでもそれを最大限の利益にする賢い頭が有利になると思う。そのために必要な学力をつけ、経済的な思考を大学で磨いていきたい。(坂倉大樹くん)