ふくろう先生の新書探検隊
第5回 今の世界は資本主義による市場に支えられている?〜経済学に学ぼう
<その3>資本主義はこれからも続くのか
混迷を深めた現代の世界を理解するには、経済学が不可欠です。そこで本新書紹介では、経済についての新書を数多く取り上げました。今回は資本主義社会の仕組みと特徴や問題点などを描いた新書を紹介していきます。
◆ふくろう先生から皆さんへ
~考えながら、読んでみよう!
・資本主義をどう捉えるのか?
・資本主義はこのまま継続するのだろうか?
・『資本主義という謎』には、『桐島、部活やめるってよ!』が出てきます。この物語をどう理解すればいいだろうか?



金子勝、アンドリュー・デウィット:著(岩波ブックレット)
金子勝:慶應義塾大学経済学部名誉教授。アンドリュー・デウィット:立教大学経済学部教授で、政治経済学者です。

水野和夫(集英社新書)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官を歴任。現在、法政大学法学部教授。

水野和夫、大澤真幸(NHK出版新書)
水野和夫:三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官を歴任。現在、法政大学法学部教授。
大澤真幸:社会学者で、2010年4月より個人雑誌『THINKING「O」』(左右社)を発行。
◆ふくろう先生は「こう考えた!」

万民が民主的に経済活動できる資本主義体制では、貨幣の自己増殖能が最大限に活かされ、そのお陰で経済活動の効率が大変高くなる一方、労働者は労働という自分の時間を売る立場に置かれ、結局人間として全面的な開放にほど遠い状態に置かれると捉えています。
囚人のジレンマというゲーム理論によれば、外部環境が無制限な状況ではそれぞれ協力的な“いい人”戦略が優勢になり、一方資源枯渇など制限環境下では“利己的”戦略が優勢になります。なぜなら「我先に奪わない限り生き残れない」からでしょう。
もちろん、競争により淘汰をもたらし、進化を促すという意味で、制限環境下の“利己的”戦略も歴史上重要な役割を果たしてきました。ただ、“いい人”戦略優勢な場合、ヒトの基本四欲(食、危険回避、性と協力欲)と齟齬なく、人々はしあわせを享受できます。しかし、ほとんどの時代むしろ制限環境下のため“利己的”戦略優勢になってしまい、人の協力欲と矛盾するため、人々は不幸せ感を抱くはずです。地球資源の無制限状況創出が可能なら、継続すべきと考えられますが、それはほとんど無理のようです。そこで何らかの形で現資本主義を変更し、貨幣などに制限を加えた新たな社会組織体制を目指さざるを得ないだろうと私は考えます。
これは私の見通しであり、世間で認められているわけではありません。しかし、このように考えると、現代の各種経済・社会現象を理解しやすくなるように思います。皆さんは、広く学問を学び、できれば生命科学を基盤にした人文・社会科学の観点から、各種問題に対処し、この地球の将来を担っていって欲しいと願います。