ふくろう先生の新書探検隊

5回 今の世界は資本主義による市場に支えられている?〜経済学に学ぼう

<その3>資本主義はこれからも続くのか

『脱「世界同時不況」 オバマは金融危機を克服できるか』

金子勝、アンドリュー・デウィット:著(岩波ブックレット)

金子勝:慶應義塾大学経済学部名誉教授。アンドリュー・デウィット:立教大学経済学部教授で、政治経済学者です。

オバマ大統領の三つのチェンジは成功したのか

『世界金融危機』に続く本書は、2009年のオバマ大統領当選当時のアメリカの金融危機や財政赤字などを分析し、オバマ政権の舵取りがいかに難しいかを述べた一冊です。

 

まず、「影の銀行システム」の膨張と崩壊によって、GDPの20%にまで膨張した金融セクターの割合が10%にまで縮小し、金融市場が麻痺状態に近づくとともに、国家信用(国債など)によって金融市場の信用が担保されている状況を指摘しています。このため、米国の財政赤字は、大きく膨らんでいます。

 

オバマ大統領は三つのチェンジを提示しましたが、その第一が、新しい金融規制を提示し、国際的な主導権を回復することです。二つ目は、グリーン・ニューディール政策で、地球温暖化阻止の先頭に立ってエネルギーを石油から再生可能エネルギーへ転換し、産業と雇用を作ること。三つ目は、インターネットを駆使した「討議民主主義」により、下からの圧力を組織化した政治的リーダーシップのあり方を示すことです。

 

さて、第一のチェンジが必要なのは、まず、2007年のサブプライム危機とそれに続くアメリカの金融危機は「影の銀行システム」の崩壊によるもので、損失がいくらかわからないことが大問題であるためです。しかし、ウォール街からの圧力が強く、結局オバマ政権は本格的な金融規制はできず、銀行国有化や、日本の不良債権処理同様、公的資金投入などの処理をずるずる続けるしかない、すなわち国家信用で救済するしかないだろうと憂います。そして、炭素排出権の証券化によって環境投資バブルを引き起こして、再び「バブル循環」に戻る以外、証券化ローン市場を戻すことは出来ないだろうと指摘します。しかしバブルはやがて破綻するのは自明で、この路線を続ける限り、ますます国家の救済に依存せざるを得なくなるという深みにはまっていくと予想します。

 

ンフレを誘導して政府や消費者の債務を解消するという案もありますが、戦費調達を含めアメリカは財政赤字が膨大であり、縛りが多くて身動きがとれない状況であると分析しています。

 

一方、グリーン・ニューディール政策はスマートグリッド(統合的送配電網)の導入目標など具体的な成果が出ると期待しています。再生可能エネルギーへの投資により、脱石油を図り、雇用の創出もできるはずです。さらに、アメリカに加え中国の再生可能エネルギーへの転換政策にも触れ、それに対して大きく遅れをとっている日本の現状を指摘します。

 

さらに三つ目の討議民主主義については、医療保険制度導入のためにはうまく機能して成功したものの、そのあとは問題点が顕わになってきたとしています。

 

さて、そのあとは筆者たちの意見が紹介されます。オバマ大統領の任期が終了し、三つのチェンジはどの程度成功したとされ、どのように評価されるのでしょうか。

 

私には著者たちの分析・予想は、概ね的を射ていたように見受けられ、その慧眼に敬意を表したいと思います。また、現在、ビジネスマンであるトランプ氏の政権となり、状況は変化しています。それもあり、今後著者たちによる予想と、その当否を楽しみにしたいと思います。また若い皆さんがこのような経済・政治・社会に広くわたる研究を志し、今後の世界・人類の行く道を示していただけることを願っています。

 

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