第6回 生物であるヒトとは

<その1>生命誕生と進化

最近生命の起源、進化、ヒトの誕生などについて、いろいろなことがわかり始めてきました。きっと高校の生物学でも学習することでしょう。そんな新しい知識や見方を紹介した新書がいくつか出版されています。そんな新書の一部を紹介します。

◆ふくろう先生から皆さんへ

~考えながら、読んでみよう!

 

・進化の中で、ヒトはどんな生き物として登場したのか?

・生命誕生の秘密は何か?(つまり地球外生命探索では、まず水の存在が重要とされる。しかしそれだけでいいのだろうか?)

 

ふくろう先生ならこう考える 

『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』

中沢弘基(講談社現代新書)

著者は、物質・材料研究機構名誉フェロー、日本地球惑星科学連合フェローです。

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『生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門』

松井孝典(文春新書)

著者は、千葉工業大学惑星探査研究センター所長で、専門は地球物理学、比較惑星学、アストロバイオロジーです。

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『利己的遺伝子から見た人間 愉快な進化論の授業』

小林朋道(PHPサイエンス・ワールド新書)

筆者は、鳥取環境大学教授で、専門は動物行動学、人間比較行動学です。

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◆ふくろう先生は「こう考えた!」

まずRNAという物質が自己増殖能を有し、生命の起源とされます。RNAや類似の核酸であるDNAが遺伝子となって細胞が誕生します。生命体は、その“利己的な遺伝子”に操られて自己増殖能を発揮し、かつ変異により多様性を生んで環境に適応して生きています。

 

その起源から明らかなように、生命体存在の原理は“自由”と多様な個体の“平等”です。そこでは生物基本三欲=食、性、危険回避が重要です。さらにチンパンジーとの共通祖先から、ヒトはその生物基本三欲にプラスして、第四の基本欲=協力欲を持って進化しました。直立歩行で見張りや走行も容易、協力して狩猟もできたお陰でサバンナでも生き残ることができたのです。しかも認知限界はチンパンジーの50人規模です。利己的な遺伝子についての本やヒトの進化についての本を総合すれば、このような見方に行きつくと思います。

 

紹介した新書でも触れられています。しかし、なかなかそのものずばりで書いてある本がありません。高校生の皆さんは、分子生物学、動物行動学、進化学などを総合した高校生物学を学んだ上で、ご自身の心に深く思いを馳せられることをお勧めします(自分という生き物は、どんなふうに生まれ、どんな生き物として生きているのだろうか?)。すると、生命体の本来の有り様を、すべての細胞の奥深くまでしみ込んでいる『はるかな記憶』(セーガンとドルーヤン著、朝日新聞社)として、きっとご自身の心の中に感じられることと期待します。

 

生命誕生時には、水プラス高温、粘土などの吸着質が必須であろうと思われます。これは中沢氏の新書で勉強させていただきました。彼の研究成果は素晴らしいと評価しています。