第7回 生物であるヒトとは

<その2>誕生と本性

現代を生きる私たちは、700万年前に生まれた二足歩行の動物から進化しました。20万年前、現代人と同じ種のホモ・サピエンスが生まれ、その末裔が私たちなのです。現代の諸問題に立ち向かうときにも、私たちヒトの特徴・本性を理解した上で考え、判断し、行動すべきだと思います。そこでヒトの性質について、いくつかの新書を紹介したいと思います。

◆ふくろう先生から皆さんへ

~考えながら、読んでみよう!

 

・進化の中で、ヒトはどんな生き物として登場したのか?

・生命誕生の秘密は何か?(つまり地球外生命探索では、まず水の存在が重要とされる。しかしそれだけでいいのだろうか?)

(質問は第6回と同じです。どちらも生命の起源とヒトの進化についてです)

 

ふくろう先生ならこう考える 

『人間とはどういう生物か 心・脳・意識のふしぎを解く』

石川幹人(ちくま新書)

著者は明治大学教授で、専門は認知情報学および科学基礎論です。

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『人類はなぜ短期間に進化できたのか』

杉晴夫(平凡社新書)

著者は、帝京大学名誉教授で、動物生理学を専門としています。

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『人の気持ちがわかる脳 利己性・利他性の脳科学』

村井俊哉(ちくま新書)

著者は京都大学大学院准教授で、専門は臨床精神医学一般の精神科臨床医です。

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『ヒトの心はどう進化したのか 狩猟採集生活が生んだもの』

鈴木光太郎 (ちくま新書)

著者は新潟大学教授で、専門は実験心理学です。

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◆ふくろう先生は「こう考えた!」

まずRNAという物質が自己増殖能を有し、生命の起源とされます。RNAや類似の核酸であるDNAが遺伝子となって細胞が誕生します。生命体は、その“利己的な遺伝子”に操られて自己増殖能を発揮し、かつ変異により多様性を生んで環境に適応して生きています。

 

その起源から明らかなように、生命体存在の原理は“自由”と多様な個体の“平等”です。そこでは生物基本三欲=食、性、危険回避が重要です。さらにチンパンジーとの共通祖先から、ヒトはその生物基本三欲にプラスして、第四の基本欲=協力欲を持って進化しました。直立歩行で見張りや走行も容易、協力して狩猟もできたお陰でサバンナでも生き残ることができたのです。しかも認知限界はチンパンジーの50人規模です。利己的な遺伝子についての本やヒトの進化についての本を総合すれば、このような見方に行きつくと思います。

 

紹介した新書でも触れられています。しかし、なかなかそのものずばりで書いてある本がありません。高校生の皆さんは、分子生物学、動物行動学、進化学などを総合した高校生物学を学んだ上で、ご自身の心に深く思いを馳せられることをお勧めします(自分という生き物は、どんなふうに生まれ、どんな生き物として生きているのだろうか?)。すると、生命体の本来の有り様を、すべての細胞の奥深くまでしみ込んでいる『はるかな記憶』(セーガンとドルーヤン著、朝日新聞社)として、きっとご自身の心の中に感じられることと期待します。

 

生命誕生時には、水プラス高温、粘土などの吸着質が必須であろうと思われます。これは中沢氏の新書で勉強させていただきました。彼の研究成果は素晴らしいと評価しています。